RIZAPがジーンズメイト買収、経営再建にコミットできるか?

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■「ジーンズメイト」の再建は可能か?

運営するトレーニングジムが人気のRIZAPグループは新たに、フリーペーパー発行のぱどとジーンズメイトを買収する。ジーンズなどカジュアル衣料販売のジーンズメイトには気がかりな点もある。

2003年に健康食品のネット販売でスタート。16年7月に健康コーポレーションからRIZAPグループに社名を変更した同社は、『図解! 業界地図2017年版』でも紹介しているように、M&A(企業の買収・合併)を積極的に進めている企業だ。

上場企業だけでも、インテリア雑貨のイデアインターナショナル、ゲームセンターのSDエンターテイメント(旧ゲオディノス)、衣料品の夢展望、雑貨のパスポート、女性体型補整下着のマルコを傘下に収めてきた。それに今回のぱどとジーンズメイトの子会社化だ。

そのジーンズメイトの店舗平均像を確認しよう。同社は、2008年2月期の最終黒字を最後に、その後は赤字(当期純損失)を継続中で、今期も赤字予想である。過去の利益の蓄積があることと、借入金がないこともあって事業が継続できていると見ることができるが、同社の販売不振は、店舗の平均像からもはっきりわかる。

40万円を超えていた1店舗1日平均売上高は30万円を割り込み、14年度と15年度は26万円台での推移だ。リストラを進めたこともあって、店舗従業員も2人強から0.6人に減少。店舗運営はパート依存にすっかり移行し、従業員はそれぞれ2店舗を掛け持ちしているという計算になる。

建物や構築物などの帳簿価額を示す、店舗の資産価値にも注目したい。10年2月期は、1店舗平均715万円だったが、翌年は0円、つまりは無価値になり、15年2月期には少額とはいえ価値を取り戻したが、16年2月期には再び無価値に転じている。ちなみに、トレーニングジムRIZAPの1店舗平均資産価値は、3000万円前後である。

■「減損損失」で店舗価値ゼロの現実

設備投資をしなければ、店舗の資産価値は年月の経過とともに自然に減少する。店舗の新設などに投じた資金は、使用する年数に応じて毎年度減価償却するからだ。だが、ジーンズメイトにしても毎年2億〜3億円の設備投資を実施。したがって、店舗の資産価値は急激には下降しないものだが、現実にはたった1年で無価値になったりしている。

ピーンとくる読者もいるだろう。店舗の価値がゼロになったのは、「減損損失」という会計処理をしたためである。企業の稼ぐ力が低下し、計上している店舗資産の回収が見込めない場合には、回収が可能な額まで帳簿価額を引き下げる会計制度だ。

ジーンズメイトは、2007年2月期に9300万円を計上して以来、毎年、減損損失を計上してきた。16年2月期までの累計額は31億円を超す。そのため、店舗の資産価値がゼロになっているわけだ。

減損損失は損益計算書に計上する。実際に会社のキャッシュが減るわけではないが、利益は減少することになる。

その減損損失の計上は、ジーンズメイトにかぎらない。15年度の減損処理額はイオン465億円、セブン&アイHD226億円、ファーストリテイリング223億円である。大手といえども販売不振の店舗を抱え、減損処理を余儀なくされるということだ。

販売不振のジーンズメイトをどう立て直すのか。RIZAPグループの力量が問われる。

(ジャーナリスト 鎌田正文=文)