鹿島アントラーズのクラブW杯準優勝を、浦和レッズの関係者は複雑な思いで見つめていたかもしれない。Jリーグが1シーズン制で行われていれば、年間勝点最多のレッズがクラブW杯に出場していたからだ。Jリーグの大会方式の揺らぎ──結果的に時限的な開催となった2ステージ制とチャンピオンシップ(CS)の復活によって、クラブW杯の出場クラブにも影響が及んだ。

 来シーズンからJリーグは、1シーズン制へ立ち返る。胸のつかえがとれたと感じるサッカー関係者は、おそらく多いだろう。僕自身もそのひとりである。

 だが、すべての人が歓迎していると決めつけていいものか。

 2ステージ制とCSを復活させる裏づけとして、Jリーグ側は「盛り上がりの増加」をあげた。第1ステージ、第2ステージ、CSと、チャンピオンを巡る争いを1シーズンに3度作ることで、新たなファンを獲得していきたいとの見通しを立てていた。

 そのとおりの理由でJリーグのファンとなった人は、1シーズン制への回帰をどのように感じるのだろう? 

 僕のような古くからの関係者は、「誰もが好意的に受け入れられるだろう」と決めつけている。1シーズン制こそが王道であり、2ステージ制より分かりやすくなるから、というのが理由だ。

 本当にそうなのか? 「2ステージ制より分かりやすいけれど、盛り上がりがへって物足りなくなるな」と、不満を覚える人がいるかもしれない。2ステージ制に惹かれてJリーグに興味を持った人たちへの新たな興味を、1シーズン制に戻るJリーグは提供できるのだろうか。そこに僕は、漠然とした不安を覚える。

 16年はリオデジャネイロ五輪が開催されたため、U−23世代の台頭と競争という話題があった。17年はU−17とU−20のW杯があり、20年の東京五輪へ結びつけたメディア戦略が展開されていくかもしれない。久保建英がJ1にデビューすれば、かなりの話題を集めるだろうが……結局は代表絡みである。

 ロシアW杯予選も佳境へ向かっていくが、これもまた日本代表に基づいた話題で、中心選手はヨーロッパでプレーしている選手たちだ。Jリーグそのものの魅力をどうやって高めていくのかについては、各クラブの営業努力に委ねられている。

 それが当然だという意見もある。ただ、ライト層を固定層へ変え、まだ掘り起こされていない層をサッカーへ惹きつけるための施策は、リーグ全体で進めていくべきだろう。

 2017年シーズンから、Jリーグ観戦の軸足はCS放送からインターネット動画配信へ移る。視聴環境の変化による影響は不透明だが、ライト層がJリーグのために配信契約を結ぶとは考えにくい。そうかと言って、誰もが気軽にチャンネルを合わせられる地上波のテレビ放映は、1シーズン制になっても増える予定はない。

 2ステージ制から1シーズン制へ戻すことの利益は、確実にある。その一方で損失がゼロではないことに、Jリーグ側はもっと思いを寄せるべきではないだろうか。