「岐阜基地航空祭2016」にて、「心神」とも呼称される国産ステルス技術などの実証機X-2が一般初公開されました。5月の飛行試験から音沙汰がなく、なんらかのトラブルとの見方もありましたが、開発担当者からは違う話が聞こえてきました。実際、どうなっているのでしょうか。

国産技術の粋を集めたX-2「心神」、一般初公開

 2016年10月30日(日)、航空自衛隊岐阜基地(岐阜県各務原市)で開催された「岐阜基地航空祭2016」にて、先進技術実証機X-2、いわゆる「心神」が初めて一般公開されました。例年、同航空祭に参加していた人気アクロバットチーム「ブルーインパルス」の飛行展示はありませんでしたが、日本初のステルス機を見学できる最初の機会とあってか、多くの見学客が岐阜基地を訪れました。


「岐阜基地航空祭2016」にて、一般初公開された「心神」こと先進技術実証機X-2(大西優人撮影)。

 X-2は、防衛装備庁/防衛省技術研究本部と三菱重工が主体となって研究・開発した、次世代戦闘機に必要な技術を開発・実証するための試験機です。今年4月22日、小牧基地(愛知県小牧市)にて初飛行を成功裏に実施し、上昇、下降、旋回など基本特性の確認を行い、岐阜基地へ着陸しています。続く5月18日には、降着装置(車輪)を機内に格納しての最初の飛行試験を実施しました。

 しかしながらこの5月18日の飛行を最後に、2016年10月現在に至るおよそ半年弱にわたり、X-2は空を飛んでいません。さらにこの期間中、X-2に関する公式発表はまったくなかったため、飛行試験が実施できない重大なトラブルがあったのではないかという観測もありました。

「飛べない」のではなく「飛ばなかった」、そのワケ

 なぜ、X-2の飛行試験を実施しないのでしょうか。三菱重工にてX-2開発を担当した「チームATLAS(先進技術実証機航空システム)」の技術者に筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)が直接、聞いてみたところ、「トラブルではなく、もともと予定されていた地上試験を岐阜基地内部で行っているため」とのことでした。

 また、「今後、X-2の飛行試験に必要となる、空中でデータを収集するための機器の搭載、およびこれらの計測機器が正常に動作することを試験、確認していたのであって、これによってスケジュール上の遅延は生じていない」といい、それらの試験は10月中には完了、飛行試験は、防衛装備庁/防衛省ら「官」側次第としながらも、早ければ11月初頭には再開する見込みであることを明らかにしました。

 この先、2030年代に実用化を見込む、航空自衛隊F-2戦闘機の後継機に必要とされる各種技術が、X-2によって試験される予定です。具体的には、高いステルス性と機動性を両立させるための「機体設計」や「飛行制御システム」、推力変更装置を備えたIHI製「国産アフターバーナー付きターボファンエンジン」、新しい非金属製の「炭素繊維複合材」、そして全球を監視可能にするレーダーを機体各部へ埋め込む「スマートスキン」のための構造(スマートスキン自体は搭載せず)などです。

不要な技術も開発中? X-2最大の目的とは…?

 それらX-2で試験される技術は、あくまでも「必要となる可能性のある技術」であって、すべてが将来型戦闘機開発に適用されるわけではありません。また実のところ、本当に先進的な部分は、構造材を除くとそれほど多くありません。「ステルス」や「推力偏向装置」は、すでに海外で実用化済みの既存技術であり、特に「推力偏向装置」は、戦闘機における高機動性が重視されなくなっていることから、あえて搭載しない機体が少なくないのです。

 X-2開発の最大意義は、各種技術の実証ではなく、それらをひとつにまとめ実際の機体として完成させる「インテグレーション」の実証にあるといえます。

 日本政府はX-2の試験結果を待って、2018年にはF-2後継機開発に関する将来の方針を決定するとしています。恐らくそれは、コストなどの面から完全な純国産化とはならず、他国の企業などが参画する国際共同開発になるでしょう。

 いずれにしても、X-2に残された時間はあまり多くありません。そのため短期間で集中して飛行試験が行われる可能性が高く、予定通りならばいよいよ11月にも、X-2を開発した意義が本格的に試されることになります。

【写真】初飛行中のX-2「心神」


先進技術実証機X-2「心神」は2016年4月22日、初飛行に成功。このとき降着装置(車輪)は露出したままでの飛行だった(写真出典:防衛装備庁)。