「物欲を寸止め」できる人のコツコツ錬金術4
■経済は「物欲」で回っているのだ!
女性は買い物が大好きだと言われていますよね。かくいう私も買い物は大好きです。百貨店やショッピングモールへ行くと、売り場面積の多くは女性をターゲットとした作りになっています。女性にとって、買い物は「何を買おうか考えること」からすでに始まっていて、商品やサービスを手にいれる過程も楽しんでいます(ウインドウショッピングなどがそうですね)。
楽しさのあまり、ついつい予定していなかったものを買ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。釘を刺すようですが、女性が借金を作る原因は圧倒的にショッピングによるものが多いと言われています。
ただし、視点を大きく変えて経済全体としてみた場合、女性がたくさんお買い物をすることはよいことだと言えます。「金は天下の回りもの」と言われますが、実際にお金というものはいろいろなところ(家庭、会社、政府)をグルグルと流れて回っています。
ご存知のように、不景気というのは、このお金の流れに勢いがない状態のことです。女性がお買い物をしないと景気が悪くなる……という可能性もあるのです。
たとえば、毎年200万円使っていた女性が、節約して使うお金を100万円に減らしましたとしましょう。
100万円節約をすることは、この女性にとってはよいことです。ですが、国全体の経済でみると、その女性が使っていた100万円の消費の需要が減ることになり、それは企業の生産力の低下にもつながります。
すると、企業は生産量を減らすため、従業員の労働時間を減らしたりリストラを行ったりします。労働時間が減った従業員は給料が少なくなり、さらに消費が減ります……。このように、ひとりひとりの行動が合理的でも、それが集まって全体としてみると必ずしも良い結果をもたらさないことがあります。これを経済学では「合成の誤謬(ごびゅう)」といいます。
■「物欲の塊」でもできる“いつの間にか貯金”
個人的な意見ですが、私はよく考えて欲しいものであれば、きちんとお金を払って買い物をするべきだと考えます。とはいえ、見境なく買い物をして全く貯金をしないというのも危険です。
貯金というといかにもハードルが高いイメージがありますが、大事なのは無理のない範囲でシンプルな「仕組み」をつくることです。それさえ確立して、習慣化できれば「いつの間にか貯金できた」というのも夢ではありません。
収入のうち、どの程度貯蓄に回せばよいか、その目安をまとめました。
▼独身の場合
ひとり暮らしの方は手取りの10%、実家暮らしの方は家賃や生活費がかからないとして手取りの30%は貯蓄へ回したいところです。実家にお金を入れている場合は、それを含めて30%でOKです。
▼結婚をしていて子どもがいない場合
支出に大きな変化がないので、常時15%を目安に貯蓄しましょう。住宅購入を考えている場合は、頭金を増やすために20%を目指しましょう。
▼子どもがいる場合
子供がいる方は、子どもが小学生に入学するまでは10%、子どもが小学校を卒業するまでは8%、中学校を卒業するまでは6%、高校を卒業するまで4%を目安に貯蓄しましょう。
教育費にもっともお金がかかる大学生の間は、なかなか貯蓄はしづらい時期です。ボーナス分の20%は貯蓄したいものです。
■物欲を寸止めしてお金を貯める心理学
下の空欄に記入をして、貯蓄額の目安と現状を比較してみましょう。
<理想と現実 あなたの場合は?>
----------
貯蓄している額【 円】÷手取額 【 円】×100=貯蓄率【 %】
【理想(目安)】
手取額【 円】×貯蓄率の目安【 %】=貯蓄したい目安額【 円】
ボーナス 手取額【 円】×20%=貯蓄したい目安額【 円】
----------
では、最後に無理なくお金を貯めるコツをご紹介しましょう。
(1)「先取り貯蓄」をしよう
先にお金を使って、後から余った分を貯めるのではなく、お給料が入ったらすぐに積み立て口座に移して、残りのお金で生活する「先取り貯蓄」がオススメです。
勤めている会社に財形貯蓄があれば利用しましょう。財形貯蓄はお給料から天引きされますので「最初からないつもり」で貯められるという利点があります。
(2)ざっくりと1カ月の予算を決めよう
家賃や水道光熱費、電話代などは、毎月それほど変わらないので把握しやすいと思います。
問題は、食費や服飾費などの月ごとに増えたり減ったりしがちな支出項目です。はじめのうちは、使ってもよいお金を1週間分決めてみましょう。1カ月の食費が3万円なら1週間では7500円ですね。そうすると1日に平均して1000円くらい使っても良い、ということがわかります。
(3)3回に1回は我慢してみよう
欲しいものが見つかったとき、衝動的に買ってしまうのではなく一度考え直してみましょう……というのは正しいのですが、欲しい気持ちが強いと買うために必要な理由をあれこれ探してしまうことになるかもしれません。
そこでもっと機械的に、3回に1回はがまんする、といったルールを作りましょう。これは絶対に必要だ、と思っていても意外になんとかなるかもしれませんよ?
(4)アメとムチを用意する
先ほどのがまんするルールに似たものですが「コレを買ったらアレを買わない」「◯◯◯円貯まったらコレを買ってもよい」というように、アメとムチのルールを作りましょう。
お金が貯まらない人の理由のひとつは、例えば、2つ欲しいものがあれば2つとも買ってしまうというところにあります。どちらも必要だと思っても、どちらか1つは諦めましょう。「3回に1回は我慢」「2個のうち1個は諦める」といったルールをしっかり守って物欲を“寸止め”し、前出の天引き貯金を徹底すれば、「いつの間にか貯金」ということも可能でしょう。
節約も大切ですが、楽しくお金を使うことは、自分自身や経済全体にとってもよいことです。収入と支出の適当なバランスを保ちつつ、楽しく買い物を楽しみましょう。
(ファイナンシャル・プランナー 井戸美枝=文)