野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

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先日日経ビジネス誌でコマツの特集をやっていました。本誌でも触れられていましたが、日経ビジネスオンラインでその特集に合わせてこういう記事が掲載されていました。
「コマツ、モノ作りを鍛える「体幹トレーニング」」

この記事では、コマツのサプライヤの協力会である「みどり会」企業と工作機械の稼働状況や加工条件、加工時間、停止時間などの情報をクラウドを使い共有している取組を紹介しています。現在はコマツ社内とみどり会参加企業合わせて工作機械100台、溶接ロボット400台の情報が管理されているとのことです。このような取組みは以前からM2Mと言われコンセプトはあったものが最近のIoTの技術で現実化してきたものです。

このようなサプライヤも含めた生産効率の追求を何故「体幹トレーニング」と呼んでいるのでしょう。
昨近の中国経済の減速を受けコマツは建機の新規受注は落ち込んでいます。2015年の中国売上高は最盛期に比べ1/4以下に落ち込んでいるようです。このような経営環境下コマツはアフターサービスの取り込みなどのストックビジネスへの転換やICTを活用したスマートコンストラクションなどのソリューションビジネスへの転換などを進めています。
今回のサプライチェーン全体での生産効率の追求の取組みについても生産量が少ない今でないと腹を据えてできないことです。
工場がフル稼働している時は目の前の注文をこなすのが優先のため、設備に手を入れるのは難しい。「今は仕込みの時期です。」ということです。このような生産や調達の仕事は正に企業にとっての体幹であり今のうちに体幹を鍛えることが「将来に備える」ことにつながるからです。
日経ビジネス本誌の大橋社長のインタビューでもこうおっしゃっています。「こうした状況下では、目先のシェアを追っても仕方がない。今やるべきことは、コマツ自身の体質改善だ。」
まさに体幹トレーニングで体質改善を目指している様子が分かります。

それでは調達・購買部門にとっての体幹トレーニングとは何でしょう。私は人材育成がそれに当るのではないかと考えます。以前リーマンショックの頃にも、忙しくない時にしかできないことがある、それが人材育成ではないか、ということを書きました。
その頃と比較すると多くの企業で調達・購買人材を専門的な職種として捉え、専門技術を育成するための取組みが進んできました。従来なら放し飼いに近いOJTと取りあえず外部の研修でも行っておけ、ということでしたが、それに対し自社にあったスキル要件の定義、スキル評価を実施し企業・組織・個人としての弱み、強みを知り、それを元にスキル育成プランを作成、実施し、改めてスキル育成状況をモニターする、というようにサイクルを回す取組を始めているのです。

最近はこの手のコンサルティングやご相談がかなり増えています。しかし、多くの企業で特にスキル習得のプログラム実行面で課題が残されていることは確かです。私はスキル習得については外部研修だけでカバーできるとは考えていません。むしろOJTや社内にトレーナーを設置して社内の人間が教えられるようにすることが継続的な人材育成には欠かせないと考えています。
トレーナーをやった経験を持つ方は理解できるでしょうが、実際に人に教えることは自分が理解していないとできません。分からない人には教えられないからです。現在のような経済環境が不透明な時期には将来に備えるための体幹トレーニングとして第一にお勧めなのは社内トレーナーの育成ではないか、と考えます。トライアンドエラーをしながらもいろいろ試していけるのがこの時期だからです。

体幹トレーニングと言えば今週末は東京マラソンです。私も運よく抽選に当り初参加します。
このメルマガを皆さんが読まれる時には既に終わっているかもしれません。私もこのマラソンに備えて走るだけでなく体幹トレーニングもやってきました。
成果が出るかどうか楽しみです。

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