中国政府は現在、中国の人口は2030年に増加から減少に転じるとする見解を示している。中国メディアの第1財経は1日、多くの学者が「中国の人口はもっと早く減少に転じる」、「2023年ごろだろう」と考えていると指摘する記事を掲載した。(イメージ写真提供:123RF)

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 中国政府は現在、中国の人口は2030年に増加から減少に転じるとする見解を示している。中国メディアの第1財経は1日、多くの学者が「中国の人口はもっと早く減少に転じる」、「2023年ごろだろう」と考えていると指摘する記事を掲載した。

 中国では長らく厳しい産児制限が続いた。いわゆる「一人っ子政策」だ。2016年までには、届け出をすれが2人目の子を産めるようになったが、政府の思惑通りには、出生数は増えない見通しという。

 記事は、現状において「3人目の子」として生まれる赤ちゃんが、2015年の場合全出生数の1655万人に対して80万人強で、出生数の5%程度しかいないことに注目。夫婦1組について「3人目の赤ちゃん」は規則違反ということになるが、それにしても小さすぎる数字で、中国人全般に「子づくり」に対する意欲が低迷しているのは明らかという。

 中国政府は「2人目の出産の解禁」で、年間の出生数が300万増加すると見込んでいる。2050年までに出現する労働人口は3000万人分増加し、人口バランスにおける老齢化も緩和できるとの考えだ。そして、中国の人口が減少に転じるのは2030年と見積もっている。

 しかし、人口学者の姚美雄氏が計算したところ、2050年における労働人口の増加は「3000万人には、はるかに届かない」水準にとどまるという。また、高齢者が多くなるので死亡も増え、2023年には中国の人口は減少しはじめるという。政府の見込みより7年も早いことになる。

 人口学者の黄文政氏は、出生人口のピークは2017年で、年間出生数は1750万人から2000万人と予測する。しかし2018年には激減し、2020年までの平均で年間出生数は1650万人から1850万人と、最低ラインの場合現在とほとんど変わらないという。

 同じく人口学者の顧宝昌氏は、政府が「2人目の出産を望む可能性がある」として計算に入れている女性のうち、40歳以上の人が50%以上と指摘。「2人目の出産を解禁」しても、政府が期待する効果はでないだろうとの考えを示した。顧氏が全国各地で調査したところ、「2人目の子を作っても、経済的事情で育てるのが難しい」、「2人目を生むと、女性は仕事に影響が出る」、「子どもを見てくれる人がいない」などと言う夫婦が多かったという。

 中国経済の柱はこれまで、外需と投資だった。しかし、リーマンショックなどは「外需はあてにならない」教訓を示した。投資についても、「リターンを真剣に考えない投資」が多く行われ、深刻な財政難に陥った地方政府も多い。

 中国政府はそのため、内需拡大に力を入れることになった。そして内需拡大ための大きな障害のひとつが、社会保障制度が未整備であることとされる。老後などに不安を持つ人が出費を避けるからだ。

 少子高齢化が進行してから社会保障制度を整備するのは極めて難しい。社会保障制度を確立しないと、経済運営が困難になる。経済運営が困難になれば、社会保障制度の整備は困難になる。社会保障制度が整備できなければ、内需拡大もや少子高齢化の緩和が難しくなる――。

 中国経済と中国社会の構造問題で、「負のスパイラル」が加速する可能性は否定できない。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)