松井 拓己 / ワクコンサルティング株式会社

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既にサービス品質の向上を意識したり、活動を進めている企業は多いのではと思います。しかし実際には、サービス品質の向上やサービス品質のバラツキ解消がなかなかできずに苦悩している会社や組織が多いようです。サービス品質を向上させるには「経験を積むしかない」「ベテランの背中を見て学べ」「マニュアルを守ろう」などと月並みな指導や精神論になってしまったり、サービス品質向上が絵に描いた餅になってしまっているところもあります。

「サービス品質を上げよう」という議論は、どの企業でも日常的にされています。しかし現場は、「サービス品質を上げよう!」と言われても、明日から具体的に何を頑張ったら良いのかピンと来ないというのが本音です。「サービス品質を上げよう」とただ繰り返していても、サービス品質は上がらないのです。より具体的にサービス品質について理解する必要がありそうです。そこで今回は、サービスサイエンスの視点で少しロジカルにサービス品質の向上を考えてみたいと思います。


サービス品質を6つに分解する

ただ単に「サービス品質」といっても、具体的に何について議論したら良いのかよくわかりません。そこで、サービス品質を構成要素に分解してみると、今までよりはるかに分かりやすく具体的な努力のポイントが見えてきます。具体的には、サービス品質を「正確位」、「迅速性」、「柔軟性」、「共感性」、「安心感」、「好印象」の6つに分解します。これらを「基本サービス品質」と呼びます。「基本」ですので、これらの6つはどれも欠かすことができません。

・「正確性」がなければ、お客様からの支持は得られません。ミスや間違いが多いようでは、お客様に不信感や不安を抱かれてしまいます。ミスが許されないサービスにおいては、この正確性の向上の努力は欠かせないと思います。

・「迅速性」は定量評価しやすいので、お客様は敏感です。しかも世の中のスピードが速くなるにつれて、迅速なサービスへの期待は高まっています。また、お客様をお待たせすることについても、対策が必要になります。

・「柔軟性」は、千差万別なお客様の要求にお応えするために必要です。例えばコンシェルジュサービスは、お客様からの例外要求にうまく対応するための柔軟性が極めて大切です。

・お客様が何を期待しているかを掴むためには「共感性」が欠かせません。共感性がなければ、気の利くサービスを提供して、サービスでお客様に喜んでいただくことはできません。

・サービスは目に見えなくてお客様は不安を感じやすいので、「安心感」も大切です。サービスをお客様に見える形にして不安を取り除くことができれば、サービスを受けてみたいと思っていただけるお客様を増やせるかもしれません。

・最後に「好印象」。第一印象やスタッフの態度で、サービスの評価は大きく変わってしまいます。他の要素をいくら磨いても、印象が悪いばっかりにすべてが台無しになることが多々あります。

サービス品質向上のためには、これら6つはどれも大切です。それぞれの要素を高めるためには、具体的にどんな努力したら良いのかを明確に定義することは大変有効です。たとえば正確性を高めるためにチェックリストを整備して作業の抜け漏れをなくすこと、迅速性であれば24時間365日対応できるようにすること、柔軟性を発揮するために現場にある程度の権限移譲をする、などなど。現場で明日からすぐにできることから、組織的に取り組まなければならないことまであると思いますが、まずはこの6つに分解して議論してみると、実に効果的な議論ができます。

ただし、何でもかんでも取り組んでいては時間がいくらあっても足りません。そこで次回は、サービス品質を効果的かつ効率的に高めるための議論の視点に触れてみたいと思います。