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「まずは顔を覚えてもらうところからスタートする。組によって対応が違い、行事やイベントを撮らせてくれる組なら、直接最高幹部と話ができる。でも、山口組や神戸山口組は基本的に取材を受けない。だから機会を窺ってこっそり話しかけて、地道に関係を作る。それでも秘密は話してくれないし、聞いても書けない話が多い世界だ」

ある実話誌系週刊誌の記者は、ヤクザ取材の難しさをそう話す。実話誌系週刊誌とは「アサヒ芸能」、「週刊大衆」、「週刊実話」の3誌のことだ。3誌は山口組分裂騒動以降、10ページに及ぶヤクザ関連の特集記事を掲載し続けており、部数競争のデッドヒートは現在も続いている。

「分裂騒動以降、雑誌の売り上げが2割伸びた。現在は微減しているが、分裂に絡む事件を特集すると数字が跳ね上がる」(実話誌編集者)

取材するライターや編集者は必死だ。

「週2、3回の出張は当たり前になった。分裂騒動以降は関西への出張が増え、新幹線の回数券を持つようになった」(前出記者)

取材現場は、組の定例会や幹部会、墓参り、食事会のほか、ガサ入れ現場などだ。誰がどう対応したのかを逐一取材する。親しくなったヤクザから、食事をしながら情報を聞き、組幹部の動向を把握、可能ならば写真を撮る。警察の暴力団担当部署などへの取材も怠らない。別の記者は取材でこんな経験をしたことがあるという。

「高級な料理店に連れていかれたときは、財布が心配になることもある。豪快なヤクザが多く、代金を払おうとすると『お前が払うなら話さない』と言う人もいた。ある親分とクラブに行ったときには、女性が並び『好きなのを持って帰れ』と言われた。断わり切れずに一人を連れ帰り、タクシー代を渡して帰ってもらったこともある」

ヤクザ取材で特に気をつけるのは肩書や役職だ。記者が続ける。

「ヤクザは『盃』で家族の絆を結ぶ。誰と誰が親子関係にあるのか、兄弟分なのかは重要事項。それに基づき肩書と役職も決まる。しっかり頭に叩き込まないと、話についていけない」

こうした実話誌系の週刊誌について、都内のあるヤクザはこう評価する。

「いまでも自分の名前が出ると嬉しい。組のために働いていることがほかのヤクザにも伝わるからな。獄中では必ず3誌を読んでいた。組の動向がわかるから助かった」

ヤクザ専門の記者たちは、今回の分裂騒動をどうみているのだろう。

「こういった分裂は年単位で騒動が続く。数年は続くのではないかと思う」

実話誌系の取材者たちもまた、体を張っているのだ。

(FLASH 2015年12月22日号)