「地獄に落ちるわよ」という台詞が一時期流行りましたが、そこがどんな場所か知っている人は少ないはず。Wikipediaで「八大地獄」の記事を読んでみると、この世のものとは思えないひどい世界です。まあ、あの世の話ですけど。願わくば、極楽浄土に連れて行って欲しいものです。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。エチオピアからドバイ経由のフライトで、1年ぶり4度目となるタイにやってきました。そして、今年も観光はしませんでした……ただ1ヶ所を除いて。そこだけは、ネットで見つけて以来、どうしても行きたかったのです。

◆地獄寺へ

ここだけは行くと決めたのは「Wat Phai Rong Wua(ワットパイロンウア)」という名前のお寺。別名、地獄寺。バンコク市内にあると思っていたのですが、場所を調べると、かなり郊外でした。それでも、人気の場所ですから、誰かしら交通アクセスの情報を残してくれています。

ここが、ワットパイロンウア。

まずは、南バスターミナルへ。バックパッカーの集まるカオサンから、川を越えて西に行った場所にあります。



そして、こちらのバスに乗り込みます。68番と書いてあって、地獄寺まで1時間30分、43バーツ(約148円)でした。訪れる観光客も多いのか、乗務員の方も「ワットパイロンウアは、このバスよ」と親切に教えてくれます。1時間30分ほどバスに揺られると、地獄寺に到着。



降りると、すぐに立派な門が見えます。ここをくぐって寺院の敷地内へ。



入口から少し進むと、ラフな格好をした仏像出迎えてくれました。「よく来た、よく来た、ゆっくり見ていけ」とウェルカムな雰囲気でした。



日本とは違う建築様式を持つ、タイのお寺。



金色が眩しい派手な色遣い、外観を華やかにする彫刻類、鋭い傾斜の屋根、空を突き刺す尖塔の数々。



仏様が祀られていて、タイの人がお参りをしていました。



蓮のつぼみに見立てた棒に、お布施を挟んで奉納しています。



◆極楽浄土

さらに進むと、たくさんの仏像が並ぶエリアに突入。曇り一つのない穏やかな表情で座禅を組んでいます。見ているだけで、心が安らぐ世界はまさに極楽。青い空もあって、天国のような居心地のいい場所でした。

「仏の境地」という言葉が重なった、落ち着き払った後ろ姿。



どの仏様も同じポーズに同じ表情



整然と等間隔に並んだ仏様たち。



仏像の背後をインドの蛇の神様であるナーガが守っています。



様々な大きさの仏様が、同じポーズで瞑想をしていました。



この頼りがいのある大きな大きな背中は……



寺院内を見守る巨大な大仏のものでした。



◆罪

その次に見つけたのは、シュールな顔をした様々なオブジェクト群。描かれた光景からすると「こんなことをしてはいけません」という戒めを表現しているようです。

神聖なる象は大切にしないといけません。



ところ構わずズボンを降ろして用を足してはいけません。



「違うんだ、誤解だ、分かってくれ」と訴えるお父さん。夫婦喧嘩中のような2人でした。



だるまさんが転……ばなかったら、殺られちゃいそうです。お坊さんを傷付けてはいけないといったところでしょうか。



ただ意味不明なオブジェクトもあり。

あわわ、あわわ、絶体絶命の大ピンチ。



なぜか、トラとライオンがいがみ合っていました。



◆地獄絵図

※ここから先のオブジェクトはまさに地獄絵図で、作り物ですが血や内臓なども出てくるので、閲覧にはご注意ください。

そして、地獄エリアに入ります。得体の知れない魑魅魍魎が溢れかえる様は、まさに地獄絵図。一見すると、何がなんだか分かりません。まれに説明書きがあるのですが、タイ語オンリーなので読むこともできず。ただ少し調べてみると、一般的な地獄の世界と一致しています。ここは前もって予習してから訪れた方が、地獄の世界をより深く理解できそうでした。

仏様のエリアと違って、雑然としているので不安を掻き立てられます。



生気を感じられない姿が、まさに地獄。



とりあえず、混じってみました。



どれとして、同じ顔をしていません。



どの像も、まるで子どもが落書きしたかのような印象ですが、それが一段と恐怖を際立てます。同じ顔がないからこそ、いろんな表情が浮かんでいました。

特にインパクトが強かったものは、例えば死体の入った箱を運ぶ4人組。



筋繊維が浮き出た骸骨人間。



空も飛べそうなくらい、両手が大きくなっちゃっています。



寂しくて、いじけているようにも見えた巨大な顔。



赤いほっぺとお鼻が、あのヒーローに似ていたので、駆け寄って写真を取りました。



足が顔になった像は、哀しそうな表情をしています。



トイ・ストーリーにも出てくる「Mr.ポテトヘッド」のような姿。



サトウキビをかじっているようで、気になっちゃいました。



男女2体の巨人像は、敷地内でもひときわ目を引きます。手を併せて空に突き上げるポーズが、不気味さを増長。こんなに大きな巨人が襲ってきたら、手も足も出せそうにありません。



ここら一帯は、人同士で争っていました。「等活地獄」に落ちた人たちは、互いを信じることなく殺しあうという光景と一致。



倒れてしまった人の姿も。



朽ちて地面に溶けていくようですが、地獄では、この状態からでも生き返ってしまうので、延々と苦しみを受けないといけません。



僧に救いを求める地獄の亡者たち。



・訪問客の姿

これだけ辺鄙な場所にも関わらず、それなりに賑わっていました。タイ人の姿も多く、現地の人にもよく知られたスポットなのかもしれません。



おっかなびっくり敷地内を歩き回る子どもたち。



疲れたらベンチに座って一休憩。周りさえ気にしなければ、ゆっくりとできます。



・輪廻転生

タイの仏教では「タンブン(徳を積む)」という行いが大切にされ、この徳が足りなければ下等な動物に生まれ変わると信じられています。いわゆる輪廻転生。ここの地獄でも、そんなタイ人の死生観が詰まっていました。

お坊さんに手を合わせる動物人間たち。救済を望むといった光景でしょうか。



みんな身体は人間なのに、頭は動物という姿をしています。



立派な角を生やしたトナカイ。



蛇人間は、仮面ライダーにでも出てきそうな姿。



キリンさんも首を長くして、祈りを捧げていました。



動物の姿をした像は、ここだけではなく他にもあります。

成敗されているナマ足魅惑のマーメイド。



もし、いじめられていたのが亀人間なら、浦島太郎はその手を差し伸べたのでしょうか。



鼻の長い象さんもいます。



モヒカンにも見えるけど、鶏のとさかをつけた青年。



・鬼と獣

この地獄にいるのは、罪人だけではありません。地獄に落ちた人間たちを責める鬼たちも、閻魔様の下で働いています。人を人として扱わない鬼の所業は、まさに鬼畜。動物もいるのですが、どうにもこうにも狂暴で仲良くなれそうにありません。

日本だと「嘘をついたら閻魔様に舌を抜かれる」と言われますが、本来ならその仕事は鬼がやるもの。



こちらは巨大なのこぎりで、首を切られています。



現地ではよく分からなったのですが、調べてみると溶けた銅を流し込む行為のように見えます。



鎖に繋がれて、連行されている様子。



吊るされた罪人を、ハゲタカの鋭いくちばしが狙っています。



ハゲタカとカラスによって、ぐちゃぐちゃにされる肉体。



針の山に落ちた人間の内蔵をえぐるカラス。



この世の犬もおっかないのですが、あの世の犬も狂暴なようです。気をつけないといけません。



・釜茹で

私たちが地獄と聞いてイメージする針の山や血の池は、ここには見当たらず。その代わり、釜茹での釜がたくさんありました。

煮えたぎっていた巨大な釜。釜を支えるのが土台が、3つのドクロというのも怖い。



釜の中では、罪人たちが煮え湯に苦しんでいました。そんな悲劇をよそに、幾つもの鉢が全自動で周っています。小銭を投げて徳を積むことができる現世仕様。



罪人の2倍はある大きな鬼が、人間を釜の中へと放り込んでいました。



一人しか入っていない小さな釜もあります。



針の山はなかったのですが、見ているだけで痛々しい針の木を罪人が上っていました。



◆広大な寺院内

この寺院の魅力は地獄エリアだけではありません。広い広い敷地内には、いろんなお寺があって、様々な仏像が祀られています。

外観からインドのような雰囲気を醸し出しているお寺。



聖なる場所なので、肌の露出が激しい服装は相応しくなく、お寺の中には入れません。CROP TOPのシャツに描かれたI LOVE YOUは、落書きではないのがタイクオリティ。なぜ、そこにこだわる!?



せっかくなのでお参りすることに。20バーツを払って蓮のつぼみと、線香と、紙包みを手にします。



紙包みの中には金箔が入っているので、これを仏像に貼り付けます。ため息一つで飛んでいくほどに、薄い薄い金箔でした。



このお寺に祀られていた人たちは、どことなしかインド人のような顔をしています。



思わず足を止めたコミカルな表情をしていた装飾。



仏像の配置、ポーズと噛みあうことがない違和感。



やけに上機嫌な顔をしていたカップル。



インドでは広く信仰の対象となっている象の顔をしたヒンドゥー教の神様「ガネーシャ」は、タイの人たちにも崇拝されています。



黄金に輝く寝釈迦様。



◆訪問のすすめ

荘厳な王宮や歴史的な遺跡もいいですが、タイ訪問の際には地獄寺に行ってみるのはどうでしょう。ただのネタとしてだけでなく、タイ人の宗教や死生観を学ぶことができるはずです。

広大な敷地内には、数多くのオブジェクトや建物が存在。



地獄エリアを外から眺めて。



このような案内図があるので、これを頼りに寺院内を歩き周りましょう。



(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン

自転車世界一周取材中 http://shuutak.com

Twitter @shuutak)