A代表初招集の南野がイラン戦でデビューを飾るのか。今回の招集メンバーのなかでも注目の人材のひとりだ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 今後もワールドカップ・アジア2次予選で格下との対戦が続く日本代表にとって、次のイラン戦は現在の実力を図るうえで重要なテストマッチだ。親善試合とはいえ、イランに乗り込んでのアウェー戦。8万人収容と言われるアザディ・スタジアムは異様な空気に包まれる。そこで力のあるチームと対戦できるのは得難い経験で、特に若手選手たちにとっては意味深い試合になるはずだ。
 
 ハリルホジッチ監督に求めたいのも、その若手や代表での出場経験の少ない選手にチャンスを与えること。様々な選手をテストし、チームとしてのオプションを増やすのが、イラン戦でもっとも重要視すべき部分だろう。
 
 その意味で言えば、スタメンは本田や香川、岡崎といった常連組を並べたとしても、積極的な選手交代が必須だ。6人の交代枠を使い切るのは当然としても、場合によってはハーフタイムから交代選手を投入し、長いプレータイムを与える采配も視野に入れるべきだろう。
 
 ベンチを温める機会が増えた柴崎や怪我から復帰した清武はもちろん、初選出の南野もピッチ上で見てみたい人材。いずれ代表の主軸を担うであろう若手の積極起用は、日本代表が大目標に置く、2018年のロシア・ワールドカップにもつながる。現レギュラーの尻を叩く意味でも、ハリルホジッチ監督には思い切った決断をしてほしいところだ。
 
 守備的なポジションの選手であれば、塩谷や米倉にもチャンスが与えられてしかるべきだ。内田不在の影響が露骨に現われている右SBは、両者ともこなせるポジションだ。塩谷は安定した守備や中央へ切り込んでゴールに絡むプレー、米倉であればタイミングの良いオーバーラップと武器を持っており、酒井宏や酒井高を抜いて一気に序列をくつがえす可能性もある。ハリルホジッチ監督は、米倉を左SBのバックアップと考えているようだが、右でもハイパフォーマンスを見せられれば、代表定着への大きな足がかりを掴めるはずだ。
 戦術面で言えば、「縦に早いサッカー」や「幅を取った」サイド攻撃が通用するのかが焦点だろう。シリア戦では、「前半に来ないと思っていたのに、あれだけこられて微妙なズレがあった」(本田)と面食らい、「幅を取った」攻撃が機能不全に終わった。
 
 最大の原因は選手の距離感が離れていたことで、個々のポジショニングを修正した後半は本田や香川が流動的に動いて攻撃を上手く機能させている。こうした修正をもっと早い時間帯に行ない、日本のリズムに持ち込めれば、より得点チャンスも増える。
 
 もっとも、イランはアグレッシブにプレスに来る可能性も高く、「プレッシャーをかけられたバージョンと、かけられてないバージョン。どちらでこられていいように準備して」(本田)おくことも大事だろう。その際に求められるのも「距離感」(本田)の良さで、前線の選手が上手く連係しながら、「簡単に周りを使ったり、使われたり」(宇佐美)という良好な関係を築きたい。
 
 また、シリア戦で岡崎が見せたような、裏への抜け出しも求められる部分だ。相手がプレッシングに来るのであればなおさらで、トップ下やウイングも空いたスペースを意識してプレーすべきだろう。
 
 これまでの試合を見ていると、トップ下やウイングは足下でボールをもらうケースが多く、やや攻撃が単調になってしまう印象も受ける。本田や香川がスペースに飛び出して起点を作れれば、攻撃の幅が広がり、相手も守備の狙いどころを絞りづらくなるはずだ。
 
「縦に早い攻撃」を岡崎だけに頼るのではなく、複数の選手がスペースを突く多彩さを交えて、さらにバージョンアップさせる――。これをイラン相手にも実現できれば、アジア最終予選に向けての明るい材料ともなりそうだ。
 
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェストWeb)