U-18日本代表vs大学日本代表

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大学日本代表からもらった宿題を胸に、高校日本代表が初の世界一に挑む

1点目のホームを踏んだ3番・平沢 大河(仙台育英)

 U-18(高校)日本代表対大学日本代表というアマチュアトップチーム同士による一戦は初回、大学日本代表打線が甲子園優勝投手・小笠原 慎之介(東海大相模)にいきなり襲いかかった。

 1番・佐藤 拓也(立教大)が追い込まれながらも142km/hのストレートを弾き返し、三遊間真っ二つのヒットで出塁すると、2番・北村 祥治(亜細亜大)も追い込まれてからきっちり外の変化球を見極めフルカウントまで持ち込みライト前ヒットを放つ。この当たりで俊足の佐藤は三塁へ。3番・横尾 俊健(慶應義塾大)が左中間へ大きな犠牲フライを放ち1点を先制。この時、中継が本塁に向かっていると見るや一走・北村もタッチアップを成功させ二塁を陥れる。この好判断が活き二死後、谷田 成吾(慶應義塾大)のタイムリーで生還。幸先良く2点を奪った。

 追い込まれてからもしぶとく、ソツのない好走塁に加えて、一死二塁で打席に立った左打ちの4番・吉田 正尚(青山学院大)のファーストスイングは明らかに引っ張りを意識してのファール。打線全体で相手投手の攻略にかかっており、韓国で行われた第28回ユニバーシアード競技大会で初の金メダルに輝いた大学生が一分の無駄も無いお手本のような攻めを見せた。

 その裏、マウンドに上がった田中 正義(創価大)も大学生のスゴさを見せつける。投球練習を1球投げただけでスタンドからどよめきが起こるほどのストレートを最大の武器に、U-18日本代表の1番・オコエ 瑠偉(関東一)は150km/h超えのストレートに全く手が出ず3球連続見逃しで三振。2番・篠原 涼(敦賀気比)がファールを打つと拍手が起きたほどだった。

 高校日本代表の反撃は二死から。平沢 大河(仙台育英)のライト前ヒットに相手のエラーが重なり三塁に進むと打席には1年生ながら4番を任された清宮 幸太郎(早稲田実業)が入る。初球はファール。田中の投じた威力満点のストレートをファーストストライクでバットに当てたのは清宮が初めてだった。1球ボールの後、3球目はセンター前へのタイムリーヒット。ここまで投じた11球のストレートは全て150km/h台だったが、清宮が弾き返した12球目は149km/h。期待の1年生スラッガーはほんのわずかに鈍った1球を逃さなかった。

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2本塁打を放った4番・吉田 正尚(青山学院大)

 清宮 幸太郎の一打で1点を返したU-18日本代表だが、その後はパワーとスピードで上回る大学日本代表を相手にペースを握れない。

 先発・小笠原 慎之介はストレート狙いの打者から変化球では空振りをガンガン奪うがストレートは芯に当てられ、2回で52球を要し3失点。小笠原の後は佐藤 世那(仙台育英)がマウンドに上がる豪華な甲子園の決勝リレー、さらに成田 翔(秋田商)、上野 翔太郎(中京大中京)と甲子園を沸かせた投手が次々とマウンドに上がるが5回までに計5失点。被安打はそれほど多くなかったものの痛かったのはワイルドピッチ。4回までに3つあり全て失点につながってしまった。低めの変化球を止められない場面が目立ち、普段組むことの無いバッテリーで戦う急造チーム故の課題をさらけ出した。

 攻めても3回に舩曳 海(天理)、オコエ 瑠偉の連打で作った無死一、二塁のチャンスに上位打線がフライアウトに倒れる様は内野ゴロでランナーを進めた大学日本代表とは対照的で、4回先頭でヒットを放った勝俣 翔貴(東海大菅生)はサインミスかと思わせる飛び出しで危うく捕手からの牽制でアウトになりかけるなどチグハグさは否めず、ホームが遠い。

 後半も大学日本代表の4番・吉田 正尚に2打席連続となる本塁打を浴びるなどパワーで押され、慎重になった投手陣は試合を通じて9個の四球を与え、7人の継投で球数を合計すると軽く200球を超える。ボール先行でストレートを狙い打たれる場面が多かっただけにいかに投手有利のカウントを作れるかが今後の課題だ。

 打撃陣も清宮がタイムリーの後は大学生投手の球に振り負けずファールで粘り、際どい球をしっかりと見極め2つの四球を選ぶなどしたが、5回以降はわずか1安打に封じられ失策絡みで1点を返すのが精一杯。力のある投手からチームとしてどういう形で点を取るのかを考えさせられる内容となった。

 U-18ワールドカップが開幕する28日までに予定されていた実戦は3試合あったが台風の影響で2試合に。その結果、オコエを切り込み隊長にしタイブレークも見据えて9番には俊足の舩曵、木製バットを苦にせず高い打撃センスの光る平沢を上位打線に置くという方向性は見えたが、オーダーはまだまだ流動的。特に堀内 謙伍(静岡)、郡司 裕也(仙台育英)、伊藤 寛士(中京大中京)といずれ劣らぬ強打揃いの捕手陣と4番を誰にするかは大きなポイント。

 1stラウンドは5連戦で行われるため見極めと立て直しの準備期間は無い。格上の”仮想・強豪国”から攻守共に大きな宿題をもらった高校日本代表、初の優勝を目指して負けられない戦いに挑む。

(文=小中 翔太)

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