高知東左腕・前田日月が示した強敵と闘うための「努力」

92球で8回完封の高知東・前田 日月(2年)

「前田 日月」と書いて「まえだ・あきら」。この名前を見て心躍った方は、恐らく40代前後の格闘技ファンであろう。新日本プロレス・UWF・リングスといった各団体で、常に努力を怠らず、強敵と勇敢に闘い続けたその勇姿は、今も数多くの人たちの記憶に強く焼きついている。

 そして8回わずか92球で高知追手前を6安打6奪三振1与四死球で完封し、「親が格闘技好きということで、この名前をつけてくれました。僕は前田 日月さんの映像は見たことはないんですが……」と語る高知東の最速135キロ左腕。彼の名もまた前田 日月(まえだ・あきら、2年・178センチ61キロ・左投左打・高知市立大津中出身)である。

 1年8月から高知東のエースとして秋・県体育大会・夏と県内5大会中3度のベスト8進出に大きく貢献した前田。だが、彼は現状の位置を全くよしとせず、さらなる進化への努力をこの1ヶ月で進めていた。

 それは近年はやりの「ノーラン・ライアン投法」。ただ、前田の場合は他の投手とは少し動作原理が異なっている。「脚を上げてバランスを保ち、身体全体で投げる」方法は同じながら、その目的はあくまで「リラックスして投げること」。脚を上げても必要以上にスローになることになく、一連の動作の中で投球ができていたのは「夏に走りこんだ」成果と自己分析の賜物だ。

 では、彼の自己分析とは?3番を任されている打席ではネクストサークルで股関節をしきりに動かし、変化球で崩されても片手でヒットゾーンに運んでしまうシーンも多々。「日明は器用なタイプ」と橋田 行弘監督も太鼓判を押す天性の柔軟性を自ら把握しつつ「打たせて取る」に徹した。となればこの結果も必然だろう。

 次の段階は、この柔らかさをキープしつつ体重などで「強さ」を出していくこと。格闘技界と野球界。フィールドは違えども「シード校を倒す=強敵を倒す」DNAを持つ「まえだ・あきら」の遺伝子はきっとその壁も越えてくれるはずだ。

(文=寺下 友徳)

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