8年ぶりシャルケ応援ボイコット…過去にはノイアーの記念すべき日にも

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 ブンデスリーガ第33節が16日に行われ、日本代表DF内田篤人が所属するシャルケはパーダーボルンと対戦し、1−0で勝利した。この結果、来シーズンのヨーロッパリーグ出場権を獲得している。

 試合前、シャルケは深刻な成績不振によりチャンピオンズリーグはおろか、ELの出場権すら危うくなっていた。10日の第32節でケルンに0−2で敗れ、6位に転落。ヘルタ・ベルリンを下して7位に浮上したドルトムントとの勝ち点差は、わずかに2となっていた。

 こうした状況を受け、クラブは11日に元ガーナ代表MFケヴィン・プリンス・ボアテングと元ドイツ代表MFシドニー・サムの追放処分を発表。MFマルコ・ヘーガーも期限付きながら練習および試合出場の禁止と、大胆な荒療治に踏み切った。

 歯止めのきかないチームの混乱に業を煮やしたのが、シャルケのサポーターだ。残留争い中のパーダーボルンを迎えて行われた今シーズンのホーム最終戦で、試合開始から45分間、全ての応援をボイコットすることを決めた。地元紙『Westdeutsche Allgemeine』によると、「ウルトラス・ゲルゼンキルヒェン」の呼びかけに、182ものファンクラブがこのアクションに賛同したという。

 声援はもちろんのこと、応援旗やゲーフラも使用も自粛するとした上で、「その時間帯に、横断幕を使ってクラブの悪しき状況をはっきりさせる。何といっても、魚は頭から腐るのだから」と宣言。

 クラブ上層部に対する抗議が予想され、普段からお行儀がいいとは言い難いシャルカー(=シャルケのサポーターのこと)達が渾身の力を込めて作り上げるであろう横断幕に注目が集まった。

 実はシャルカーにとって応援ボイコットは、いわばお家芸でもある。伝説的な試合として有名なのが、2006−2007シーズン第10節のバイエルン戦だ。この試合でシャルケのサポーターは、チーム創設年にちなんで19分04秒の沈黙を決め込んだ。満員御礼となる6万人以上が詰めかけたスタジアムには、バイエルン・サポーターが陣取る一角だけから歓声が響くという、異様な空気が支配した。

 そんな中、13分にデンマーク代表のペーター・レーヴェンクランズが先制ゴール。ほんの一瞬、歓声が起こったが、すぐに静寂が戻り、そのまま時が過ぎて迎えた19分4秒。天井のスクリーンに19:04が映し出されると、それまでの鬱憤を晴らすかのようにサポーターが大合唱を開始した。

 すると、そのわずか数秒後にジョージア代表レヴァン・コビアシビリが豪快なシュートをゴールに突き刺すという劇的なドラマが起こり、スタジアムは揺れるような大歓声に包まれた。

 その後、シャルケは同点に追いつかれて白星こそ逃したが、それ以降のリーグ戦で引き分け分け一つ挟んで10連勝と勢いづいて一時は首位に立つと、最終戦までシュトゥットガルトと激しい優勝争いを繰り広げた(最終的には、シュトゥットガルトが勝ち点2差を守り優勝)。

 シャルケにとって、大きな転機をもたらした一戦だが、もう一つ忘れてならないのが、この試合を機に現在バイエルンで活躍するドイツ代表GKマヌエル・ノイアーが正守護神の座を手にしたということ。

 バイエルンとの大一番に、ミルコ・スロムカ(当時)監督は、絶対的守護神として君臨していた33歳のフランク・ロストに代えて、若干20歳のノイアーを起用。同じシーズンに、ロストの負傷欠場によってデビューを飾ったばかりのノイアーを抜擢した指揮官は、その理由を「フランクには少しツキが欠けているところがあったので、流れが変わることを期待した」と説明していたが、まさにその狙い通りの結果になった。

 ロストは試合をこなすごとに成長するノイアーに完全に敗れ、シーズン途中にハンブルガーSVに移籍。シャルカーの応援ボイコットは、世界最高GKの第一歩が刻まれた試合としても記憶に残った。

 そして今回の試合でもシャルカーたちはボイコットを実施し、スタジアムは異様な空気に包まれた。結局、チームはパーダーボルン相手に試合終了間際のオウンゴールでなんとか競り勝ったが、この不甲斐ない戦いぶりに試合後には大ブーイングが浴びせられている。