左側は建設中の新交通「日暮里・舎人線」=東京・舎人公園で(撮影:吉川忠行)
足立区の候補地は東六月地区と舎人(とねり)地区の2カ所。両地区とも「他の候補地よりも地価が比較的安価なので安上がりにできます」と足立区の担当者は語る。東六月地区はニッポン放送<4660>の送信施設跡地(現在は住民向け野球場として開放)、舎人地区は都立舎人公園の敷地内(一部足立区の土地)である。

 足立区内には当初、東六月地区と舎人地区に加えて、入谷地区、千住大橋地区、中川地区の5つの候補地があった。最終的に、地権者の取りまとめが容易である東六月地区、2007年開通予定の新交通「日暮里・舎人線」の新駅・舎人公園駅(仮称)ができて交通の便が良くなる舎人地区の2候補地に絞り込まれたが、1カ所に絞り込めなかったのには理由がある。東六月は駅から遠いという問題があり、舎人は土地取得の実現性に疑問が残っているからだ。

地権者の取りまとめの容易さか、駅からの距離か

 東六月地区の地権者はニッポン放送を含む5者(民間)で、すべての地権者がタワー建設に賛同しているという。したがって、土地の取得については問題はない。ある地権者によると、以前から区による周辺道路整備計画があるので、新タワー建設による道路混雑の心配もないとのこと。

 問題は鉄道の駅から遠いという点。東六月地区は、東武伊勢崎線竹ノ塚駅、西新井駅、05年8月に開通予定の「つくばエクスプレス」の六町駅からそれぞれ約1.5キロの位置にある。いずれの駅からも徒歩で約25分もかかる。同地権者は、「シャトルバスやワンコインタクシーで対応したい」としている。

 一方の舎人地区の建設予定地(舎人公園)は、新交通「日暮里・舎人線」の舎人公園駅(仮称)の目の前で、交通の便という問題はクリアできる。しかし、舎人公園は都の公園で、用地確保には都の同意が必要となる。問題は、タワー不要論を唱える石原都知事を説得することができるかどうかである。

楽しめるタワー 東六月

 東六月地区で構想されているタワーの高さは約600メートルで、第1展望台を地上400メートル、第2展望台を地上520メートルに設ける計画(イメージ図は比較表参照)。展望台でライブを行うなど、さまざまに活用したいと考えている。展望台の年間想定入場者数は280万人、タワーの建築費は概算で301億円。タワー周辺を庭園として整備する計画もある。

 「歴史的な建造物にしたい。朝・昼・晩で表情を変えるようなタワーがいい」「現在の東六月地区は観光地とはいえないが、タワーができれば変わっていくと思う。今の姿ではなく、タワーができたあとの10年、20年後のことも考慮してほしい」という。そして、後世に残るようなタワーを建てたい、とのこと。

公園との共生 舎人

 舎人公園の敷地は70ヘクタール、東京ドーム約15個分の広さである。そのうちタワーの建設予定地は約2ヘクタール。タワーの高さは600メートル、第1展望室を地上310メートル、第2展望室を地上420メートルの高さに設ける計画だ(イメージ図は比較表参照)。展望台の年間想定入場者数は330万人。タワーの建築費は概算で307億円。

 都立舎人公園にはキャンプ場や野球場、テニスコートなどがある。タワーの計画地内にも駐車場が計画されているが、満車時は公園の駐車場を利用する案も出ている。タワーが建つことで、新交通「日暮里・舎人線」の乗客が増えることが期待されている。お台場の新交通「ゆりかもめ」のように。

 かつて東六月地区にはニッポン放送の電波塔が立てられていた。東六月地区か舎人地区に、新しい巨大電波塔が建つ日がくるだろうか。(つづく

■バックナンバー
第1回(新タワーは要らない?)
第2回(台東区・隅田公園周辺)
第4回(墨田区・押上/業平橋)
第5回(豊島区・池袋)
第6回(埼玉県・さいたま新都心)
最終回(まとめ)

■関連記事
新東京タワー、墨田区に決定(2006/3/31)
新タワー、本当に墨田で決まり?(2006/3/15)
新東京タワーはどこへ行く(2005/12/22)