【川崎中1殺害】18歳少年Aが率いた“ハーフ軍団”の実像
川崎市川崎区の玉川河川敷で中学1年の上村(うえむら)遼太君(13)の遺体が見つかった事件は、18歳の無職少年ら3人が神奈川県警川崎署捜査本部に殺人容疑で逮捕され、全容解明に向けて動き出した。
捜査関係者などによると、18歳の少年は、ともに逮捕された17歳の少年2人を含めた十数人ほどのグループを形成。万引や夜間徘徊などの非行を続けた。上村君は昨年夏ごろからこのグループと関わるようになり、今年1月には万引の強要を断ったことがきっかけで、顔が別人のように腫れ上がるほどの暴力を振るわれたという。
「これまでの調べで、リーダー格の18歳の少年は、上村君への暴行を日常的に繰り返していたようです。さらに、この少年には飲酒癖があり、酒が入ると人が変わったように粗暴になるのだとか。事件前にも飲酒していた疑いがあり、酒で錯乱したことが今回の残忍な犯行に結びついた可能性が出てきているのです」(事件を取材する全国紙社会部記者)
今後の日本社会が直面する重要な問題事件の影響で、重大な少年事件のたびに問題になってきた「少年法改正」に関する議論がまたもや噴出。悲劇を招く遠因となった親や学校の責任なども取り沙汰されている。その一方、今回の事件は今後の日本社会が直面するであろう重大な問題も投げかけている。
「少年のグループは周囲から『ハーフ軍団』と呼ばれていた。その名の通り、外国人の親を持つ子が多かったからです。主犯格の少年もアジア系外国人と日本人とのハーフだった」(近隣住民)
マスコミ報道では、少年らのグループが「札付きのワルの集まり」という印象も与えがちだが、地元の人たちはそれとは異なる目で見ていた。
「不良の集まりという感じではない。それとは逆で『弱い子の集まり』という言葉のほうが正しいと思う。学校でいじめに遭ったり、周囲となじめずに不登校になった子どもたちが自然発生的に集まっていたというのが実情です」(別の住民)
そうなると、リーダー格の18歳の少年はじめ、グループのメンバーに「ハーフの子が多かった」という証言は、非常に示唆的ではないだろうか。そうした境遇にいる子どもたちが、疎外感を感じやすい状況だったとも解釈できるからだ。
「そういう意味では、数年後の日本を象徴するような事件であると言える。目下、安倍政権は外国人労働者の受け入れを拡大する政策を進めている。2020年東京五輪の影響などで、深刻化する建設業の人手不足の解消を狙った政策ですが、同時に日本の社会構造を大きく変える可能性もはらんでいる。日本が、欧米のような本格的な移民社会になることで、移民やその2世、3世が社会に不適合を起こす事例も出てくるだろう」(移民問題に詳しい社会学者)
今回の事件と相前後して世界中のメディアを騒がせているイスラム教スンニ派過激組織「ISIL」は、まさにこの移民社会の歪みを体現する組織だ。
「欧米でイスラム過激派によるテロが後を絶たないのは、日本以上に移民と定住民との間の階層化が進んでいることと無縁ではない。ISILは、社会からはみ出した移民2世、3世を巧みに取り込んで組織を拡大してきた。日本も移民政策への対応を誤ると、欧米の二の舞になる危険性は十分ある」(同前)
痛ましい事件が示すのは、将来の日本の「未来予想図」なのか。
(取材・文/浅間三蔵)