アジアカップ準々決勝で、日本はUAEに1−1からのPK戦(5−4)の末に敗れ、4年前の前回大会に続く2連覇を逃した。

 何とも釈然としない幕切れだった。

 日本のボール支配率は68.1%に達し、30本を超えるシュートを放ったのに対し、UAEのシュートはわずか3本。コーナーキックの数にしても日本の18に対し、UAEは何とゼロなのだ。どちらが攻勢に試合を進めていたのかは一目瞭然だ。

「一番悔いが残るのは、(同点に追いついた後に)追加点を取って試合をPKまでに決することができなかったこと」

 試合後、本田圭祐はそう語っていたが、日本としては120分と言わず、90分で勝負をつけるべき試合だった。数多くあったチャンスを生かし切れなかった結果、高い代償を支払うことになってしまった。

 負けるはずのない試合で負けてしまった。そんな試合内容だった。

 実際、今大会の日本は強かったと思う。ベストメンバーがベストのコンディションで戦えば、今回のアジアカップで一番強かったのはおそらく日本だ。本田が「前回は優勝できて今回はできなかったが、(個々の)クオリティやチームの完成度という点では、絶対今回のほうが高かった」と話していたように、日本のサッカーはかなり完成度が高かった。

 ただし、それは現時点での話だ。3年後のワールドカップロシア大会までその序列が保たれているという保証はない。というより、現時点での完成度の高さは、(同じメンバーで戦う限りにおいては)もはやそれほど成長が期待できないことの裏返しでもある。

 日本は強かった。サッカーが完成されていた。しかし、だからこそ、未来に視線を向けると不安は大きくなった。

 日本の連覇を阻んだのがUAEだというのも、何やら示唆に富んでいた。

 日本が1995年大会から7大会連続で出場していたU−20ワールドカップにおいて、連続出場記録が途絶えたのは、6年前の2009年大会のこと。

 前年、つまり7年前の2008年に開かれたアジアユース選手権で日本はベスト4に入れず、出場権を逃したからなのだが、その大会で優勝し、翌09年のU−20ワールドカップでもベスト8に進出する大躍進を見せたのがUAEだった。

 すなわち、日本の選手育成に陰りが見え始めたのと入れ替わるように、若年層の強化・育成で結果を出してきたのがUAEというわけだ。実際、今回のアジアカップ登録メンバーを見ても、UAE代表全23名のうち、09年当時のU−20代表に該当する89年以降生まれの選手が17名を占める。日本戦の先発メンバーに限っても、11名のうち7名がそうだ。

 先発メンバーのほとんどが20代後半以上の選手で占められていた日本とは、あまりにも対照的なチーム構成である。

 現時点で言えば、経験で上回るのは日本のほうだ。先発メンバーに関して言えば、そのほとんどがアルベルト・ザッケローニ前監督時代から主力を務めている選手であり、一緒にプレーしてきた時間も長い。チームとしての完成度が高いのも当然のことだ。

 しかし、チームとして、選手個人として、この先の伸びしろを考えたらどうだろうか。あまりに対照的なチーム同士の対戦となった準々決勝は、どちらの未来が明るいかを競う戦いでもあったのではないかと思う。

 ハビエル・アギーレ監督はブラジル・ワールドカップ組を中心に、経験のある選手を主力に据え、メンバーを固定することでアジアカップを戦った。実際、全4試合すべて同じ先発メンバーで臨んでいる。それこそが最強チームであり、優勝の可能性を最も高くするからと言えばそうなのかもしれないが、3年後のロシア・ワールドカップを見据えるならばそれが得策とは思えない。

 UAE戦で貴重な同点ゴールを決めた22歳の柴崎岳にしても、わずかな出場機会しか与えられないまま、今大会を終えることになった。昨秋A代表にデビューしたばかりの新鋭に、十分な経験を積ませることができたとはまるで思えない。

 おそらくUAEの選手たちは、仮にPK戦で日本に敗れていたとしても、未来へつながる十分な自信と経験を得ていたはずである。にもかかわらず、準決勝進出の権利まで手にしてしまった。その収穫の大きさたるや想像するに余りある。

 対して日本は、未来への投資を怠ったばかりか、目先の結果(アジアカップ連覇)までも逃してしまった。両者の差はあまりに大きい。3年後には平均年齢が30歳を超えているメンバーが、現時点での強さや完成度の高さを示したところで何の慰めにもならない。

 このメンバー構成で大会に臨む判断を下したアギーレ監督はもちろんだが、今大会をどう位置づけるのかをはっきりと示さなかったという点において、日本サッカー協会にも大きな責任があると思う。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki