野望、悲哀、嫉妬…派閥争いを生き抜く男たち

　2012年も残す所わずかとなり、3日に発表されたユーキャン新語・流行語大賞では、お笑い芸人・スギちゃんの「ワイルドだろぉ」が大賞を獲得。トップテンには「維新」「第3極」「近いうちに…」など政治に関する言葉が目についたが、ロンドン五輪の競泳最終日に「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」との言葉通り、男子400mメドレーリレーで史上初の銀メダルを獲得した松田選手らの活躍は、日本に感動と勇気を与えた。

　ロンドン五輪で日本は、史上最多となる38個のメダルを獲得したが、史上初めて金メダルを逃した男子柔道に対して、金メダル第一号となったのは“アサシン”の異名をもつ松本薫。その他にも、3大会連続の金メダルを獲得した“霊長類最強女子”吉田沙保里や、初の銀メダルを獲得した女子サッカー“なでしこジャパン”と“愛ちゃん”ら卓球女子団体、28年ぶりにメダルを獲得した女子バレーなど、女子選手の活躍が特に印象的だった。

　世間では、社会進出が進み肉食化する女性に対して、男性は草食化どころか絶食化の一途を辿り、もはや男女の立場は逆転。そんな世相をいち早く察知してか2004年には、謎の疫病によって男の数が激減し、全ての要職に女が就き、男が体を売る男女の立場が逆転した江戸時代を描いた、よしながふみによる漫画「大奥」が連載を開始。現在、累計350万部を突破している同作は、2010年に映画化されると、約200万人もの観客を動員し、その年の時代劇No.1ヒットを記録。その続編プロジェクトとして、現在放送中のテレビドラマ「大奥〜誕生[有功・家光篇]」を経て、いよいよ12月22日より最終章となる映画『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』が全国公開される。

　『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』では、五代将軍・徳川綱吉が治める豪華絢爛な元禄の世に、大奥総取締として権力を手に入れようとする野心的な公家・右衛門佐（堺雅人）と、政治から遠ざけられ世継ぎ作りに専念させられる将軍・綱吉（菅野美穂）という、孤独なふたりが辿りついた永遠の愛が描かれる。

　大奥では後継者を巡り、4人の男性を中心に野望、悲哀、嫉妬が渦巻く正室と側室の激しい派閥争いが描かれる。登場人物のほとんどが、史実の緻密な検証を基にキャラクター設定がされており、解禁となった「大奥を生き抜く男たち」特別動画とともに実在の人物を紐解いてみる。


右衛門佐（堺雅人）
公家である水瀬家の子息。御台所・信平の招きで、貧しさから脱却するため大奥へあがる。知性と才覚を武器に、将軍・綱吉に巧みに取り入り、大奥の最高権力“総取締役”の座を手に入れた。史実では、御台所・信子に和学を講じているところを学問好きの綱吉に気に入られるが、映画では大奥の男たちに孟子を教えている時に綱吉と初対面。綱吉の姿に臆することなく「民からの信頼を失った王はもはや王ではないから臣下がそれを誅することは天命にはあたらない」と論じている。

桂昌院（西田敏行）
元は三代将軍・家光の側室、玉栄。春日局の策謀で有功と共に大奥入りし、有功のために様々な策を巡らせ周囲の敵を排除してきた。その後家光との間に綱吉を授かるが、綱吉を溺愛するあまり公私にわたって干渉する。また綱吉の子・松姫の死後綱吉が懐妊しない原因は自身にあると、帰依する僧・隆光に告げられた桂昌院は綱吉に「生類憐れみの令」を発布させる。史実の桂昌院も将軍綱吉の生母として最高位の従一位に叙せられた。「生類憐れみの令」は、徳川綱吉が跡継ぎがないことを憂い、寵愛する隆光僧正の勧めで出されたという一説もある。

側室・伝兵衛（要 潤）
身分の低い黒鍬者の息子。綱吉の側室で、世継ぎとなる松姫をもうけ大奥内での地位を築く。桂昌院の元で、御台所・信平の対抗派閥に属するが、出自ゆえか元来の器量ゆえか、常に自信がなく頼りない。史実では、桂昌院がその利発さを気に入り、綱吉の側室に召し上げたとされる。子の徳松が亡き後も綱吉の寵愛が変わらなかったとされるが、映画では綱吉の興味は常にお伝の方以外のところにある。

御台所・信平（宮藤官九郎）
由緒ある公家・鷹司家から迎えられた綱吉の正室。血筋の良さが邪魔をし、綱吉に素直になれない偏屈者。お褥すべりを控え、右衛門佐を綱吉の側室にし対抗派閥である伝兵衛と桂昌院から権力を引き戻そうと企む。史実においてもこの正室・鷹司信子と綱吉の間に子はできなかった。

　ひとりの女将軍に三千人の男が仕える大奥で、日夜繰り広げられる激しい“世継ぎ”争い。その結末や如何に!?

・映画『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』2012年12月22日（土）男女逆転再び！ - 公式サイト