西友のダウンジャケット。フェザーを20%も使用。メンズで8色、レディースが6色と種類もなかなかそろっている

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昨冬、プレミアムダウンウルトラライトジャケットを国内外で約700万枚も販売したユニクロを筆頭に、大型総合スーパーの西友やイトーヨーカドー、イオンなども格安ダウンジャケットを続々と発売。熾烈な低価格競争を繰り広げたことは記憶に新しい。

今冬もユニクロは同商品を値段据え置きの5990円で売り出しているなか、10月17日、西友が「市場最安値」と謳(うた)うダウンの販売を開始し、話題を集めている。

3990円という驚異的な低価格もさることながら、赤い四角に白字で「CASUAL」と書かれたロゴはユニクロを彷彿させる。さらに西友は記者会見で「さまざまな専門店から常に勉強させていただいております」と、宣戦布告とも取れる発言で波紋を広げた。

果たして西友に勝算はあるのか。ファッションジャーナリストの宮田理江氏に聞いた。

「ユニクロと同じことをすれば勝算は薄いと思いますが、そもそも西友はアパレルではなくスーパーマーケット。ユニクロとは違う戦略を打ち出しているはずです」

では、記者会見時に西友が発言した「衣食住のワンストップショッピングが可能なスーパーの強みを生かしたい」という意図は?

「ワンストップショッピングとは衣食住の商品購入が一括で済むということ。例えば靴下が欲しいと思っても、仕事が忙しくてなかなか専門店に行けない人が、仕事帰りに西友に行けばお弁当を買うついでに靴下をパッと買えたりできますよね」(宮田氏)

なるほど。アパレル店はそういったことができないわけだから、そこが西友の強み。ユニクロにとっては脅威になるというわけか。

「西友は今、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるアメリカのウォルマートの傘下にある。また、カナダのアパレルブランド・ジョーフレッシュは食品売り場に洋服を並べるという手法で人気を博しています。西友はウォルマートの調達力とジョーフレッシュの戦略を掛け合わせているのかもしれませんね。そのためか、西友はバッグや靴などもそろえていてデザインも悪くない。ダウン以外の商品も買って損はないと思います」(宮田氏)

実際、西友のダウンジャケットの出来はどうなのだろうか。

「ユニクロのプレミアムダウンウルトラライトジャケットと比べると、オフィス系カジュアルといった印象。会社にも着ていけそうな落ち着いたデザインと色合いです。もちろん見た目と値段の比較だけではなく、中身の素材や縫製など細かく見ていかないと一概にどちらがお得かは言えませんが、西友のダウンが激安であるというのは事実ですね」(宮田氏)

さらに、西友製は決して安かろう悪かろうではないとか。

「以前、西友が850円の激安ジーンズを発売した際、とあるテレビの取材でg.u.(ユニクロの姉妹ブランド)の990円のジーンズと、現物を手に取って比較してみたことがあるんです。正直、値段の割に西友のジーンズはかなり質がよかったんですよ」(宮田氏)

スーパーがアパレル店の商品に肉薄するというのも驚きだが、気になるのはやはり安さの秘密。

「世界規模のウォルマートを活用して中間流通コストを抑えているのはもちろん、自社工場を持たず、数種のみに絞ってダウンの生産発注をすることでローコスト化を実現できているのではないでしょうか。対してユニクロは、色柄のバリエーションを昨年の65種から今年は121種にまで増加予定で、国内外合わせて1300万枚を販売目標に設定しています。自社工場を持つことで、発注の種類を増やしてもそれほどコストがかからない、ユニクロならではの強気の姿勢です」(宮田氏)

最安値を突き詰めた西友、割安感とファッション性を両立させたユニクロということか。

だが、ユニクロ商品は売れすぎたあまり、“ユニかぶり”という造語も誕生したほど、同じアイテムを着用する消費者が続出するケースも起こっている。

「週プレ読者の方々もユニクロで買い物することが多いと思うんですが、そうするとほかの人とバッティングしちゃうこともけっこうありますよね。でも、西友ならばカブりにくいので、西友のダウンは穴場的ともいえます」(宮田氏)

激安でカブりも少ない西友ダウン、かなりの狙い目なのか。

そこで実際に西友のダウンジャケットを購入、着用してみた。見た目よりも重くなく、通勤中の移動も楽々。保温性も抜群で、内ポケットまでついていて実用性も高い。縫製が甘いせいか、糸のほつれが目立つのが難点だが、3990円という値段を考えれば納得だ。

ダウンジャケットの低価格競争、西友が台風の目となるか?

(取材・文/昌谷大介 照井琢磨[A4studio])