20代の若者は将来、本当に年金をもらえるのか?
財政も現役世代も圧迫する年金。将来、制度の破綻が起こり年金がもらえなくなる心配はないのだろうか。
グラフは、年金を負担する世代の人口比率を示したものだ。高いラインで横ばいになっているなら、その国の年金制度は安定しているといえる。
これを見ると、欧米の先進国が2030年代後半に安定するのに対して、日本はその後も減り続けている。つまり、日本は年金を受給するお年寄りが急増する一方で、それを支える労働者世代も減り続けるということだ。
これで本当に年金制度は維持できるのだろうか?
「欧米先進国のようにグラフが安定するなら、その比率を目安に年金制度の設計をすればいい。しかし、日本は2070年代後半まで下がり続けます。つまり、あと70年近く年金制度は安定しないのです。そこで政府は税金を投入して、年金制度を維持しようとしている。しかし、税を投入するということは、すでに年金制度が破綻していることを意味します」(政策研究大学院大学名誉教授・松谷明彦氏)
年金制度がすでに破綻している……?
「年金が充実するなら多少の増税は仕方がないと思っている人もいると思います。私はそういう人に『目を覚ませ』と言いたい。現状、年金には大量の税金が投入されており、それによって延命したように見える。しかし、年金とは保険料と支給額が釣り合っていなければならないものです。つまり、破綻しているから税金を入れているわけです。しかも投入額は雪だるま式に増え続けるのだから、この方法は永続性がありません」(松谷氏)
じゃあ、現役世代が定年後に年金をもらえるかどうかもわからないってことか? 年金シニアプラン総合研究機構研究主幹の高山憲之氏はこう答える。
「いや、日本という国がなくならない限り、年金制度が完全になくなることはありません。年金制度はこれまでにも改革をしてきました。2004年の年金法改正では、インフレになったら、給付水準を現在の6割(標準的な収入に対して)から5割に引き下げることが決まっています。ただ、これ以上、保険料の引き上げも増税もできないし、支給額も下げられない。支給開始年齢の引き上げなどの制度改革で、なんとかバランスを取れるようにしていくしかありません」
やはり抜本的な年金制度の改革が必要なんじゃないだろうか?
(取材・文/頓所直人 興山英雄)