FWディミタール・ベルバトフは、わずか12時間のうちに、イタリアサッカー界で最も嫌われる男となってしまった。たった1日で、彼はフィオレンティーナにウィンクし、ユヴェントスのサポーターに夢を見させ、そしてさらに考えを変えてフラムを選んだのだ。家庭の事情が理由と見られる。

31歳のベルバトフは29日、午後にフィレンツェへ、夜にトリノへ来ることが予想されていた。だが、彼はイタリアを訪れず、30日にロンドンに向かって、フラムに正式にイエスを言うと見られる。

このおかしな1日は、ベルバトフがフィオレンティーナの支払いによるフィレンツェ行きの飛行機に搭乗したところから始まった。フィオレンティーナへ行くことを約束して、彼はこの飛行機に乗ることを決めたのだ。到着したら、メディカルチェックを受け、3年契約にサインするはずだった。

だが、彼の飛行機はフィレンツェに到着しなかった。どうやら、ユヴェントスから土壇場でオファーが届いたことで、彼はミュンヘンへと向かったようだ。ユヴェントスは選手の了承を得て、マンチェスター・ユナイテッドと交渉して合意を取り付け、より高額のオファーで獲得を目指していたフラムとの争奪戦を制したのである。こうして、ユヴェントスとの契約のために、ベルバトフは29日夜にトリノにやって来ると思われた。ところが、22時(現地時間)ごろ、彼はまたも考えを変えたのだ。

夜になってから、フィオレンティーナは公式サイトを通じてベルバトフを批判した。また、名前こそ出さなかったが、ユヴェントスのことも厳しく批判している。

フィオレンティーナは、「マンUと合意し、選手とも口頭合意に達したが、取引は破談になった」と発表。飛行機代がフィオレンティーナ支払いだったが、ベルバトフがフィレンツェに来ず、その理由は「他クラブの無謀でごう慢な行動」にあると主張し、それは「正しさ、フェアプレー、スポーツ倫理といった価値と無関係で、誠実さの境界線を越えた」ものだと批判した。

一方で、フィオレンティーナは選手についても、「その特長や技術的価値は別に、こうなった今、我々は彼がフィオレンティーナに来なかったことをうれしく思っている。我々の街、ユニフォーム、それらが代表する価値にふさわしくない」と痛烈に批判している。

これに対し、ユヴェントスのジュゼッペ・マロッタ代表取締役は、『スカイ』のインタビューで、次のようにフィオレンティーナからの批判に反論した。

「我々は正しく動いた。彼がフィオレンティーナを断ってから、選手にコンタクトを取ったんだ。透明性のある動きをした。フィオレンティーナの発表(批判)はお返しする。いずれにしても、ユヴェントスを拒否したのではない。ベルバトフは家族の事情から、イングランドに残る方を望んだんだ。(ニクラス・)ベントナー? 我々は評価をした。だがそれと、獲得に迫っているかどうかは別問題だ」

ユヴェントスのプランでは、ベントナーがずっとベルバトフの代役だった。交渉は水面下でスピーディーに行われたようだ。ランチタイム後には、アーセナルからも選手からも、ユヴェントスは移籍の了承を得たと見られる。だが、ベルバトフ獲得が確実になりそうだったことで、ベントナーの取引は凍結・キャンセルとなったようだ。