米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)「2012年に注目すべき世界の経営者12人」に、日本人の経営トップでは唯一、トヨタ自動車の豊田章男社長が選出されたが、その理由は意味あり気だ。

 豊田社長にとって今年は「運命の分かれ目」になると指摘、「日本にとって良いことがトヨタにとって良いことなのか」と踏み込んだ。
 「自動車王国を自負してきた米国から見れば、世界の盟主に君臨してきたトヨタが遂に3位に転落し、今年はいよいよ運命の岐路に差し掛かった。だから御曹司のお手並み拝見なのでしょうが、いかにも米国ナショナリズムが喜びそうな大統領選挙の年らしい選出方法です」(経済記者)

 トヨタは昨年暮れに'12年の世界販売を前年比20%増の848万台で計画していると発表。とりわけ注目すべきは、国内生産を前年比23%増の340万台としていることだ。これは「雇用維持のために赤字垂れ流し覚悟で国内生産を続けざるを得ない」と宣言したに等しい。
 「トヨタは世界企業のイメージとは裏腹に、極めて内向きな企業グループの側面を見せつけている。それが米国メディアには“不思議の国・ニッポンの象徴”に映ったということ。そう解釈すれば、WSJ紙が指摘した意味が読めてきます」(業界関係者)

 確かにトヨタグループの雇用維持は日本にとって「良いこと」だが、トヨタの今後には疑問符が付く。関係者が皮肉交じりでいう。
 「トヨタは遠からず日産・ルノー連合や現代自動車にも抜かれる。WSJ紙は大広告主への配慮からそこまで言及できず、注目の人に選んだことで“御曹司がんばれ”のエールを贈ったのでしょう」

 今年は章男社長にとって本当の正念場になりそうだ。