日本代表がタジキスタンに8−0で勝利した。率直に言って、とんでもないレベルの相手だった。これほどコメントのしにくい試合もなかなかない。キャプテンの長谷部もこの試合は参考にならない、というような主旨の発言をしていたけど、それがすべてを物語っているんじゃないかな。

未知数とされていた謎の相手が、蓋を開けてみればア然とするほどの弱さだった。シリアの代わりだったわけだが、W杯3次予選のレベルではないね。強い国と弱い国の差が激しいという、アジアの現状を改めて思い知らされた。日本の選手たちは飽きずに最後までよく戦ったよ。あの相手なら、高校サッカーの強豪校でも勝てたのではないかと思ってしまう。

さて、文字通り圧倒した試合の中で、ザッケローニ監督はなぜ懸案事項である3−4−3をテストしなかったのか、という声も聞かれる。けれど、その考えは的外れだと思うね。11人全員で守る相手に対して、日本は90分間を通してハーフライン付近までラインを押し上げてプレーしたわけだ。これでは、システムも何もない。
 
つまり、相手との力関係によって、システムは変化するものだ。4−2−3−1だろうと3−4−3だろうと、それはあくまで机上の論理、キックオフ時の配置に過ぎない。相手のレベル、その時々の状況によって、選手の配列は変わってくる。タジキスタン戦が、参考にならないというのはそういうことだ。同じようなレベル、同じような試合展開になるのは、二度とないと言っても過言ではない。
 
メディアも含め、みんなシステム論にこだわる傾向があるけど、サッカーは数字でするものじゃない。この試合で収穫を上げるとすれば、それがよく分かった試合だったということかもしれないね。