カズゴールに日本国中が勇気付けられた(Photo by PICSPORT)

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カズのキャラクターやバックボーンは、みんな知っているよね。夢舞台を目前にして、W杯メンバーから外されたこともある。スタープレーヤーではあるけど、決して順風満帆な競技人生ではない。しかしそのたびに這い上がり、44歳になった今も夢を追って走り続けているね。

どんな環境でも、どんな状況でも、諦めずにがんばる。その象徴ともいえるカズが、ゴールを決めた。それも流れの中から、経験と技術に裏打ちされた素晴らしいゴールだった。大きな意味のある1点となったね。

カズのゴールのみならず、29日に行われた日本代表対Jリーグ選抜のチャリティマッチは、結果的に大成功だったと思う。準備期間が少ない中で、両チームの選手たちはよくまとまっていたし、演出もよかった。国歌が流れているときの、会場の雰囲気がすべてを物語っているよ。“オレたちの日本”が、一つになった瞬間だ。

多くの募金が集まったのはもちろん、前日練習にもたくさんの人が集まったし、海外からの取材もあった。今回の震災と福島原発の問題は世界中で報道されており、この試合が海外メディアに取材されたことは、「日本が安全である」「日本は死んでいない」ということをアピールする絶好の機会となったんじゃないかな。

そして、参加した選手たちも一生懸命プレーし、試合の趣旨がうまく伝わったと思う。強いていえば、Jリーグ選抜には、リャン・ヨンギ以外にも、外国人プレーヤーを選んでほしかったかな。外国人プレーヤーがプレーすることで、もっと海外へのアピールになったのではないか、という思いはある。

小倉会長は英断だったね。日本では、「こんなときにスポーツなんて」という声も相変わらず聞こえる。そうした声に対して、今回の試合は、プロフェッショナルのあり方を印象付けるものであったとも思う。

プロというのは、休んじゃいけないんだ。プロスポーツ選手はスポーツが仕事なのだから、スポーツをするべきだ。厳しい言い方をすれば、自粛というのはアマチュアリズムだよ。自粛したいので休みますという会社員がいるかい? それぞれのプロが、それぞれの仕事をすることが、国の発展を促すんだ。節電するのは当たり前。だからって自粛している場合じゃないよ。

チャリティもこれで終わりにしてはいけない。今回使用したユニフォームは、「復興のユニフォーム」だ。この「復興のユニフォーム」をまとって、東京でも札幌でも新潟でも試合をすればいいと思う。そしてリーグ戦が再開したら、今度は「復興リーグ」だ。全試合に募金箱を置いて、募金額を公表するのもいい。リーグ戦には、「継続する」という意味合いも含まれているからね。

これで終わりじゃないよ。復興のために走り続けるんだ。走り続けた先に美しいゴールがあることを、カズが示してくれたのだからね。(了)