■ PKのスペシャリスト

PKのスペシャリストといって、まず思い浮かぶのがG大阪のMF遠藤。代名詞となった「コロコロPK」を武器に抜群の成功率を誇る。プロになってから失敗したのは3回のみ。最近では「コロコロPK」のイメージを逆手に取った「スピードのあるキック」でゴールを狙うことが多くなって、相手GKにとっては、さらに難しい状況になっている。

他に日本人でPKが上手い選手というと、元甲府のMF林健太郎、元V川崎のDF石川康、現鳥取のMF服部年宏の名前が思い浮かぶ。現在、J1でプレーしている選手では、清水のMF藤本も確実に決めるイメージがあって、今シーズンはPKだけで6点をマークしている。

■ ロベルト・バッジョ

外国人選手でPKというと思い出されるのが、元イタリア代表のFWロベルト・バッジョ。

1994年のアメリカワールドカップでは満身創痍の中でチームを引っ張って、決勝トーナメントの1回戦のナイジェリア戦では試合終了間際の同点ゴールと延長でのPKで2ゴールを記録。続く準々決勝のスペイン戦でも試合終了間際に決勝ゴール、準決勝のブルガリア戦では2ゴールと獅子奮迅の活躍でチームを決勝まで導いたが、ブラジルとの決勝戦ではPK戦のラストキッカーで失敗してしまった。

ワールドカップの歴史を見ても、なぜか、超ビッグネームがPKを失敗して、試合に敗れるケースが多いが、バッジョはその典型であり、「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」 という名言も残している。

■ PK成功率

2010年でPKで話題になったのはジュビロ磐田のDF駒野友一。ワールドカップの決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦でPKに失敗し、「悲劇のヒーロー」的な扱いとなった。その後も、10月に行われたソウルでの日韓戦でスタメン出場するも前半早々に負傷退場。シーズン終盤を棒に振るなど不運な一年になってしまった。

そもそも、「PKは決めて当たり前。」という感じはあるが、その成功率はいったいどのくらいなのか?ということで、2003年以降のJ1とJ2のPK成功率を調べてみた。

※ J1のPK成功率
 成功総数成功率
2003334082.5%
2004515887.9%
2005516776.1%
2006566684.8%
2007445481.5%
2008335164.7%
2009485488.9%
2010485981.4%
 36444981.1%


※ J2のPK成功率
 成功総数成功率
2003374582.2%
2004486178.7%
2005353989.7%
2006536482.8%
2007516973.9%
2008455680.4%
2009727991.1%
2010516677.3%
 39247981.8%

このとおりで、成功率は約80%である。ちょうど5人蹴ったら1人は外す計算になる。JリーグではPK戦は無いので、このデータは試合中のPKのみである。基本的には、チームでももっともPKが上手な選手が蹴るが、5回に1回は外れる計算になる。

この数字は高いのか?低いのか?ということであるが、下のリンク先の日本経済新聞の記事を読むと、欧州の主要リーグでも成功率は80%強であり、過去のワールドカップ(ドイツ大会までの18大会)でも81%ということで、成功率は80%くらいということで間違いないようである。

サッカーのPK、なぜ入らない?(前)

サッカーのPK、なぜ入らない?(後)

■ プレッシャーのかかるPK戦

成功率80%のPKであるが、キッカーにとってはプレッシャーがかかるものであり、トーナメントではPKを決めるか/外すかで「天国」と「地獄」に分かれる。元日本代表監督のイビチャ・オシム氏はPK戦を好ましく思っておらず、代表でも、ジェフでも、PK戦が始まるとロッカーに引き上げてしまうのが常であった。

ということで、PK戦は廃止すべきという意見もあるが、その替わりの勝敗を決着する手段を用意するのは難しい。「抽選で決める」というのは選手には負担は無いが、完全に「運任せ」というのはスポーツとしてどうかと思われるし、かつてのアメリカのMLSで採用していた「シュートアウト合戦」というのも面白いとは思うが、選手にプレッシャーがかかるのは同様である。

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