JFLで優勝した鳥取が昇格を決め、来年からJ2は20チームで争われる。だが現状は最終節を残して1勝しかしていない北九州に象徴されるように、チーム数が増えた分だけリーグ内での格差が広がっている。今年は19チームが参戦したが、実際にJ1昇格にチャレンジしていたのは4〜5チームだけだった。
 
またさらに深刻なのは、J2以下のチームの高齢化だ。例えば来年昇格してくる鳥取だが、JFL後期開幕戦のスタメン平均年齢が29.2歳。最も若いのが大学新卒の中山で23歳だった。結局元Jリーガーたちの経験を生かして昇格は果たしたものの、次の舞台で渡り合うビジョンは見えてこない。
 
一般的に海外では若手が下部リーグで経験を積み、トップリーグでプレーするチャンスを掴んでいく図式が出来ている。本田圭佑や松井大輔が、このパターンに当てはまる。ところが日本の場合は、カテゴリーが下がるほど高齢化の傾向が顕著になる。J1で通用しなくてカテゴリーを下げるタイプが多く、伸びしろを持つチームが少ないことが活力を欠く要因になっている。財政的に逼迫した多くのJ2以下のクラブは、若い選手を育てたりチャレンジさせたりする余裕がなく、どうしても計算の出来る中堅以上の選手を使おうとするからだ。
 
一方スペインでは、バルセロナやレアル・マドリードのカンテラ(下部組織)で育った選手が、所属チームでトップ昇格を逃しても、他のクラブで次々にプロ契約を果たしている。
 
またそこから代表入りを果たすような選手も少なくない。結果的にはレベルの高いビッグクラブのアカデミーが、国全体の底上げに貢献していることになる。だが日本では、有力大学チームやJFLの横河武蔵野を下して天皇杯に出場を果たした東京Vユースでも、トップ昇格する数人以外は大学などへ進む。つまり18歳で大人以上の実力を見せた選手たちが、今までより低いカテゴリーでプレーを続けるという見方も出来る。
 
だがこの選択も決して不可思議ではない。J2の若手の平均年俸は200〜300万円と言われている。将来を考えれば、いくら有望な素材でも大学への迂回は自然だ。
 
日本のユースレベルは、世界一のスペインと比較しても劣ってはいない。例えば、京都ユースは今年スペインの国際大会の決勝でバルセロナを破り優勝している。京都は本来エース格の宮吉拓実がトップ昇格を果たし、中心選手の伊藤優汰もケガで欠いていたのに、アウェイで世界屈指の名門に勝利したわけだ。
 
だが18歳から20歳代前半、つまり大学年代で彼我の差は加速的に広がっていく。要するに、この年代に厳しい経験を積む場を用意できない構造が、停滞の大きな要因になっている。
 
メキシコやイタリアの下部リーグでは、年齢制限を設けている。リーグ戦には、必ず何歳未満の選手を何人起用しなければならないというようなルールだ。いつも“ベストメンバー”で戦うことを促すJリーグとは逆の発想とも言える。
 
日本代表が高体連出身者ばかりで占められていることが話題になるが、Jのアカデミーも確実に結果を出しつつある。宇佐美貴史(G大阪)、小野裕二(横浜FM)、小川慶治朗(神戸)などは、既にJ1でも十分に戦えている。ところがそのJ1を底上げするべきJ2やJFLが中堅以上の選手ばかりで占められているようでは先の見通しは暗い。
 
18〜22歳は、選手として最も重要な時期だ。そこが低賃金、低機会では、世界のベスト10は望めない。(了)