前回に引き続き、ワールドカップのベスト4について考えていこう。

 過去にベスト4進出を果たした国は24カ国。その内訳を見ると、ほとんどがヨーロッパと南米の国々ばかりだ。

 多くの評論家が「近い将来、世界を制するだろう」と予言するアフリカ勢は、実は一度もベスト4に入ったことがない。ヨーロッパ、南米以外では、アメリカと韓国がそれぞれ一度、準決勝に勝ち進んだだけである。

 しかもアメリカは、参加国が少なかった1930年ウルグアイ大会での成績で、韓国にしても共催国という地の利に恵まれた2002年日韓大会での実績である。

 開催国でもないアジアの国が、4強を目標に掲げる――。

 夢を持つのは自由であり、夢を持たなければ始まらないことも確かだが、聞く人によっては壮大な目標を通り越して、妄言と捉えられてしまうかもしれない。

 実際に筆者は10日ほど過ごしたバルセロナで、日本に長く住んでいたスペイン人(と書くと「俺はカタルーニャ人だ」と怒られるだろう)に、こんなことを言われた。

「日本ってベスト4狙ってるんでしょ。世界を知らないって笑われちゃうよね」

 もっともなのだが、傍から言われると腹が立ってくるものだ。しばらく黙っていると、彼は追い討ちをかけてきた。

「野球のWBCにスペインが出て優勝するって宣言したら、熊崎さん、どう思います?」

 物凄く説得力のある喩えだったので、思わず深く頷いてしまった。

 だが、この男はスペインが一度しかベスト4がないということを、おそらくは知らないだろう。

 ベスト4経験国の表を眺めていくと、近年の大会でベスト4に進む可能性の高い国は、次のように分類することができる。

(1)優勝を義務づけられた国
 ブラジル。ドイツ。イタリア。

(2)上記3カ国とウルグアイを除く優勝経験国
 アルゼンチン。フランス。イングランド。

(3)上記を除くヨーロッパの常連国
 スウェーデン。オランダ。ポルトガル。

(4)一時期に有力選手が勢揃いしたヨーロッパの国
 94年アメリカ大会のブルガリア。
 98年フランス大会のクロアチア。
 02年日韓大会のトルコ。

(5)上記を除く開催国
 62年チリ大会のチリ。
 02年日韓大会の韓国。

(4)と(5)が、いわゆる快挙とされるところだが、いまの日本はどちらにも当てはまらない。ベスト4への道のりは、世間が険しいと思う以上に険しいのだ。

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