【薬剤師のつぶやき】「麻薬」と「覚せい剤」の違いって・・・

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混同していると突っ込みたくなる「麻薬」と「覚せい剤」。このところの報道で「覚せい剤」だ「麻薬」だと言っているが、たまに、覚せい剤も麻薬のひとつ、なんてニュアンスで話している報道があったりすると、薬剤師の私は、無条件でイラっときてしまう。

試しに「麻薬と覚せい剤って違うものだと思う?」と聞いてみれば、「えっ、違うんじゃないの?」と、いかにも聞かれたから考えたような答が返ってくるだろう。
同じ質問を薬剤師にしてみるとどうか。薬剤師の感覚だと両者は完全に違うもの。何を今さらと一蹴したくなる。しかし、「では、何が基準で分かれているの?」と、さらに突っ込んだ質問されると、「えっ、それは国が決めているだけで、基準とかはないんじゃないかな・・・」と、シドロモドロになったりするだろう。
法律上では、
麻薬・・・麻薬及び向精神薬取締法において麻薬に指定されているもの
覚せい剤・・・覚せい剤取締法で規制されている薬物
という定義しかない。あくまで「法律に記載されている」という基準で、薬品を区別している。

さて、実際の調剤の現場では「覚せい剤」そのものを扱うことはほとんどなく、「覚せい剤原料」として指定されている医薬品を扱うことがある。つまり、薬剤師である私は「麻薬」「覚せい剤原料」に関わる法律によって、発注・保管・調剤の規制を受け、これを遵守しなければならない。これらの違いを感じるところは「保管」であり、それぞれ下のように規制されている。
(下線部筆者注)
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■麻薬の保管(麻薬及び向精神薬取締法より抜粋)
第三十四条 (略)
2 前項の保管は、麻薬以外の医薬品(覚せい剤を除く。)と区別し、かぎをかけた堅固な設備内に貯蔵して行わなければならない。

■覚せい剤の保管(覚せい剤取締法より抜粋)
第四章 取扱
第二十二条  (略)
3  第一項の保管は、かぎをかけた堅固な場所において行わなければならない。

■覚せい剤原料の保管(同法より抜粋)
第五章の二 覚せい剤原料に関する指定及び届出、制限及び禁止並びに取扱
第三十条の十二  (略)
2  前項の保管は、かぎをかけた場所において行なわなければならない。
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わかりやすく説明すると。麻薬は、麻薬・覚せい剤以外のものと一緒に保管してはいけない。通常は金庫があり、それを麻薬金庫として使っている薬局が大多数だ。これが、覚せい剤、覚せい剤原料、と変わっていくにつれ、規制が緩くなっている。覚せい剤は、金庫に保管していれば、他に何が入っていてもいいし、覚せい剤原料なら、鍵さえかかれば机の引き出しでもいい。
日常でそんな扱いをしているので、覚せい剤と麻薬が混同して報道されていると、オイオイと突っ込みたくなるのだ。

(Written by 富野浩充)

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