朝日新聞の高野連「擁護記事」を書いたのは高野連理事だった

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   いわゆる「野球特待生」の処遇を巡る問題で、日本高等学校野球連盟への批判が高まるなか、朝日新聞だけが高野連を擁護するかのような「記事」を掲載した。一見すると、一般の記者が署名入りで主張を書いたかのように見えるが、記者は高野連の理事も務めていた。

朝日以外はそろって高野連批判

   野球部員の特待生制度について加盟高校の調査を進めていた高野連は2007年5月3日、全国376校に学生野球憲章に抵触する特待生制度の申告があったと発表した。特待生になっていた生徒は現段階で高野連が把握しているだけでも、硬式野球で2,920人、軟式野球で51人に上った。特待生は07年5月末までの対外試合への出場が禁止され、特待制度を解約する措置がとられることになる。

   こうした、高野連の決定には方々から批判の声が上がっている。
   07年5月3日付の読売新聞は、

「これらの(野球憲章に違反した)強豪校なしに甲子園人気は語れない現実に、高野連が気づかなかったはずがない。(中略)高野連は、今回の調査を受けて、特待生制度問題の幕引きを図るのではなく、憲章見直しの第一歩とすべきだ」

と報じた。さらに、07年5月7日放送のフジテレビ系情報番組「新報道プレミアA」では、コメンテーター櫻井よしこさんが「現実を見れば変えなくてはならないのを、規則にしたがって現実を変えようとする本末転倒」と痛烈に批判。
   5月5日の産経新聞では「その時代時代に合った規約やルールを模索すべきなのに、不磨の大典のごとく崇めたてまつれ、とでも言いたげな高野連の態度は、あまりにも強圧的で時代錯誤もはなはだしいと言わざるをえない」とするスポーツジャーナリスト・二宮清純さんのコメントを掲載している。1964年に作られた野球憲章をかたくなに当てはめようとする高野連の姿勢に批判の声がメディアの中でも高まっている。
   さらには、伊吹文明文科相も07年5月7日の衆院教育再生特別委員会で「生徒に被害の及ばないように(高野連と)お話をしたいと思っている」と、高野連の対応に苦言を呈している。

「報道内容に問題はないと判断しています」

   一方、07年5月3日付の朝日新聞は「透明性、高める努力必要」と題した速水徹・大阪本社スポーツエディターの記事を掲載している。それは次のようなものだ。

「憲章がなければ、今以上に混沌とした状態を招いていたと思う」
「憲章制定から半世紀以上の時が流れたが、その精神まで古びたとは思わない。ルール破りが横行する今の球界にあって、スポーツの原点である、フェアプレー精神をうたう憲章の気高さは、色あせていない。もちろん、通達を2度出しながら、これまで実態を把握してこなかった日本高野連の責任も重い。ただ、問題解決へ迅速に動いた姿勢は前向きに受け止めたい」

   野球憲章を遵守する高野連の措置を前向きに捉えているという点で、朝日の記事はメディアの中では論調が異なっている。朝日新聞社は、全国高校野球選手権大会を高野連とともに主催しており、もともと両者はつながりが深い。
   しかし、それだけではない。この記事を書いた速水大阪本社スポーツエディターは、なんと高野連の理事を務めていたのである。もちろん、記事にはそのことには一言も触れられていない。朝日新聞社広報部はJ-CASTニュースの取材に対し、書面で回答。

「弊社大阪本社スポーツエディターの速水徹は、日本高野連の理事を兼ねております。高野連は、様々な意見・助言を募って連盟の運営に役立てるため、弊社大阪本社スポーツエディターを理事として選任していると聞いています。これは、弊社の肩書きがスポーツエディターにかわる前の『運動部長』『スポーツ部長』の時代から続いているものです」

と述べている。いわば、高野連と一体ともいえる記者が、高野連の方針について報道することに問題はなかったのか。それについて同社は、

「ご指摘の5月3日付の記事は、速水が大阪本社スポーツエディターとして書いたものです。その中で『これまで実態を把握してこなかった日本高野連の責任も重い』と、その対応について明確に批判し、責任の重さを指摘しています。報道内容に問題はないと判断しています」

と述べており、あくまで「客観的で公正な報道」との見方は崩していない。