東京都千代田区にある東京地方検察庁(資料写真:吉川忠行)

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証券取引法違反の容疑で、東京地検特捜部と証券取引等監視委員会(SESC)の捜査官が16日午後6時30分過ぎ、東京都港区の六本木ヒルズにあるライブドア本社などグループ数社へ強制捜査に入ってから、23日で1週間が経った。

 東京地検特捜部らは同日午後8時までに、堀江貴文社長を含む幹部社員のパソコンや文書を押収し、同社内の大会議室に移って明朝まで分析作業を続行した。社内では、立ち会った一部の幹部らに対し資料の照会を求めるため、行き来する捜査員らの姿が一晩中見られた。堀江社長は、同日深夜に行ったPJとライブドア・ニュースの合同インタビューで「捜査は午後4時ごろのNHKのニュースを聞いて知った」と“寝耳に水”であったことを明らかにした。

 今回、捜査に入った東京地検特捜部とは、正式名称を「東京地方検察庁特別捜査部」という。特別捜査部は、東京、名古屋、大阪の地方検察庁にのみ置かれた組織で、大きな経済事案や政財界を巻き込んだ疑惑など高度な法律知識を有するケースを扱うことが多い。

 証券取引法違反容疑での捜査は、証券市場の公正な取引を守るSESCが先に調査に入り、地検に告発するのが通例で、今回のように、SESCによる告発の前に、地検が直接に強制捜査に入るのは異例だ。この東京地検特捜部を率いるのが、大鶴基成(もとなり)部長(50)。前任の井内顕策(けんさく)氏(56)が最高検察庁の検事に昇格した2005年4月に、同地検交通部長だった大鶴氏が着任した。

 大鶴部長は大分県出身で、1980年に検事になると、約12年間、福岡、大阪、釧路、水戸、大分など各地検検事を務め、13年前に東京地検特捜部に着任。通算9年2カ月在籍し、副部長として土屋義彦前埼玉県知事の長女による政治資金規正法違反事件や、日本歯科医師会をめぐる事件などを指揮した。

 法務省のホームページ上にある「検事を志す皆さんへ」というページにアクセスすると、大鶴部長のメッセージが掲載されている。題目は「闇の不正と闘(たたか)う」、大鶴部長率いる現特捜部の方針がうかがえる。

 文中で、検事志望者に対し「悪質な事案であるにもかかわらず、法の網の目をかいくぐるようにして行われているため、なかなか刑事事件としては立件されないものや、巧妙な隠蔽(いんぺい)工作が行われているためそもそも捜査機関に探知さえされないものなど、闇の部分の広がりは想像以上のものがあります」と大鶴部長は問題提起している。

 その上で、困難な捜査を打開するものとして、◆悪いことを悪いと感じることができる素朴な正義感◆実直に生活する人々の生活と利益を守る熱意◆法律適用を多角的に検討し駆使する能力−の3点を挙げ、「額(ひたい)に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち、法令を遵守して経済活動を行っている企業などが、出し抜かれ、不公正がまかり通る社会にしてはならない」と主張している。【了】

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