2000年に打ち上げられ、2005年の交信を最後に行方がわからなくなっていたNASAの地球磁気圏観測衛星IMAGEがアマチュア天文学者によって実に約12年ぶりに発見されました。IMAGEは現在も地球を周回する軌道におり、地球と交信するための信号を発しているとのことです。

NASA’s Long Dead ‘IMAGE’ Satellite is Alive! - Riddles in the Sky

https://skyriddles.wordpress.com/2018/01/21/nasas-long-dead-image-satellite-is-alive/

Amateur astronomer discovers a revived NASA satellite | Science | AAAS

http://www.sciencemag.org/news/2018/01/amateur-astronomer-discovers-revived-nasa-satellite

IMAGEは、太陽風の影響による地球磁気圏の大域的な変化を観測する人工衛星で、2000年3月25日にアメリカのデルタIIロケットによってヴァンデンバーグ空軍基地より打ち上げられました。その後、地球の赤道面に対する軌道傾斜角が「90度」という珍しい軌道に投入されたIMAGEは数々の観測を行ってきましたが、2005年に通信が断絶して同年12月にミッションは終了されていました。



しかしその約12年後の2018年1月20日、アメリカのアマチュア天文学者であるスコット・ティリーさんがIMAGEが発したとおぼしき無線信号を受信しました。ティリーさんは当初、2018年1月8日にSpaceXのファルコン9ロケットによって打ち上げられたものの、軌道投入に失敗したと考えられている極秘の人工衛星ZUMAの行方を探っていたのですが、そんな時に飛び込んできたのが、後にIMAGEの信号だと判明する謎の電波だったそうです。

その時の様子を示すのがこの周波数グラフ。中心に周波数2270.505MHzの伝送波信号が記録されており、その1.7MHz上下にデータを示す信号が記録されているとのこと。



信号を詳細に調査したティリーさんは、信号に特有のパターンがあることを発見しました。これは電波を発している人工衛星が地球に近づいたり遠ざかったりする際に、電波の周波数が影響を受ける「ドップラー効果」によるものであると判明。ちょうど、救急車が近づいて遠ざかるときに音程が変化するのと同じことが、人工衛星の電波にも生じているということになります。



このパターンを過去のデータと比較することで、ティリーさんはこの信号を発している人工衛星が「2000-017A」であることを突き止めました。そしてこの番号こそが、2005年末に行方をくらましてしまったIMAGEだったことが判明しました。ティリーさんが自身のブログでこのことを公表すると、多くの人やNASAの関係者からも反応があったそうです。

ティリーさんは1月24日、IMAGEの開発に携わり、プロジェクトチームを率いたNASAのジェームズ・L・ バーチ博士にコンタクトを取り、IMAGEを発見したことを伝えたところ、バーチ博士からはすぐに「非常に興奮している」との返答があったとのこと。その後、バーチ博士から連絡を受けた元IMAGEの地上システムマネージャ、リチャード・J・バーリー氏がティリーさんに接触し、NASAの関連部署にも情報を共有したことを教えてくれたとのこと。その後、さまざまな詳細な確認が行われた後に、信号が実際にIMAGEからのものであることが確認されたそうです。

正常に動作して交信が途絶える前のIMAGEは、衛星自身が120秒間で一回転するスピン運動を行っていました。この時の回転数は「0.5rpm」と表されるのですが、受信した信号のパターンからは、再発見時のIMAGEはこの回転数が0.34rpmに落ちていることが確認されているとのこと。その様子が以下のグラフで示されています。



NASAでは今後、バッテリーや電子機器が正常に動作するかどうかを確認のうえ、IMAGEを再起動できるかどうかを確認するとのこと。IMAGEに搭載されている6機の観測機器のうち、少なくともいくつかは今でも正常に動作している様子が確認されているそうです。