新年会見を行う文大統領=10日、ソウル(聯合ニュース)

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【ソウル聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦問題を巡る2015年の韓日合意への韓国政府の対応方針が90年代に日本政府が設立した「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)への対応と類似した展開を見せている。

 康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が9日午後に発表した方針と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の10日の記者会見により輪郭が明らかになった慰安婦合意への今後の対応には、日本政府が予算から拠出した10億円を韓国政府の予算に変え、結果的に被害者が「日本政府の支援」ではなく、「韓国政府の支援」を受けるようにするとの内容が含まれている。

 この方針がこのまま推進されればアジア女性基金への対応と同じ轍(てつ)を踏むことになるとの見方が出ている。

 日本政府は1993年に慰安婦問題への旧日本軍の関与を認めて謝罪した河野談話を発表し、95年には当時の村山富市内閣が主導し、民間からの寄付をベースとしたアジア女性基金を設立した。

 日本側は慰安婦問題の解決策として、首相による謝罪の手紙を送付するとともに、同基金から被害者に1人当たり200万円の「償い金」の支払いと、政府拠出による医療・福祉支援を申し出たが、韓国の被害者と支援団体から「法的責任を避ける日本政府の責任回避手段に過ぎない」との批判が提起された。

 批判を受け韓国政府は日本が提供しようとするものと同規模の慰労金を被害者に提供する事業を98年から進めた。またアジア女性基金による韓国内の慰安婦支援事業を中止するよう日本側に要求した。 

 アジア女性基金の事業はフィリピン、台湾、インドネシア、オランダなどでも行われ、2007年に事業を終えて解散したが、韓国では外交摩擦の原因に発展し、失敗したとの評価を受けた。

 アジア女性基金は民間からの寄付を基盤としており、日本政府の予算からの拠出を決めた2015年の慰安婦合意とは違いがあったが、今回の韓国政府の方針により日本の拠出金を韓国政府が負担することになれば変わりがなくなるとの指摘も出ている。

 また韓国政府は合意の破棄や再交渉は求めないとしたものの、日本の拠出金を韓国政府が予算で負担することになれば、日本側が合意違反を指摘する可能性もある。

 慰安婦合意には「韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出する」との文面が含まれており、被害者支援のための予算は全面的に日本政府が負担することが規定されている。  

 韓国外交部傘下のシンクタンク、国立外交院の元院長の尹徳敏(ユン・ドクミン)氏は10日、「慰安婦問題は結局、しこりを残したまま再び原点に戻るもようだ」とし、韓日間で慰安婦問題解決に向けた動きが再び生じるのか、確信を持って述べるのは難しいとコメントした。