縦に早いサッカーを目指すハリルホジッチ監督のスタイルは、日本に合っていないという。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 12月12日に味の素スタジアムで行なわれたE-1選手権の第2戦で、中国に2-1で勝利した日本。その試合結果は、韓国でも報じられている。
 
「日本、中国を破りE-1選手権2連勝…韓日戦が“決勝戦”」(『聯合ニュース』)
「“劇的ゴール専門”の侍サッカー、事実上の決勝戦となった韓日戦」(『SPORTSQ』)
「“昌子の幻想ゴール”日本、中国に2-1勝利…大会2連勝」(『sportalkorea』)
 
 その多くは試合経過を振り返るものだったが、この日中戦は、現地で取材した韓国人記者の目にはどう映ったのか。韓国でもっとも有名なフリーのサッカージャーナリストとして知られるソ・ホジョン記者に話を聞くと、開口一番にこう切り出された。
 
「北朝鮮戦からスタメンを7人代え、代表経験の浅い選手が多数出場していましたが、それでも日本は、韓国が引き分けた中国に勝利した。今日の試合を見る限り、16日の韓日戦では韓国も苦戦を強いられるでしょう」
 
 日本の実力を認めているわけだが、その一方でハリルジャパンの課題も見えたという。
 
「ハリルホジッチ監督がやろうとしているサッカーを、まだ選手たちが完璧に実践できていないように見えました。ハリルホジッチ監督は“縦に速いサッカー”を目指していると聞きましたが、日本の選手たちは“横に繋ぐサッカー”に慣れてしまっている。

 細かいパス回しでスペースを生み出すのは日本の長所だと思いますが、現指揮官のサッカーとは相性が良くないのでは。中国戦で先発メンバーを入れ替えたのは、中2日で選手を休ませたかっただけではなく、ハリルホジッチ監督のサッカーにフィットする選手を探す“テスト”の意味もあったのではないでしょうか」
 
 ちなみに2014年のブラジルW杯では、当時ハリルホジッチ監督が指揮していたアルジェリアが韓国を4-2で破っているが、その試合も現地で取材していたソ・ホジョン記者は、「韓国にとってはトラウマになっている試合です」と前置きしながら、こう話す。
 
「その頃からハリルホジッチ監督のサッカースタイルは変わっていません。アルジェリアをW杯ベスト16に導いたように、その戦術が世界に通用するというのは間違いない。それだけに、ハリルホジッチ監督が思い描く理想と日本選手のプレーにギャップが生じているのは残念にも思います」
 ソ・ホジョン記者は、「むしろ、スピードがあって素早くスペースに入る選手が多い韓国のほうがハリルホジッチ監督のサッカーに向いている」とも分析するが、それほどハリルホジッチ監督の戦い方は日本選手に馴染んでいないということだろう。
 
 ただ、その一方で、日中戦での活躍が目立った選手もいるという。16日の日韓戦を控え、ソ・ホジョン記者は、韓国が警戒すべき選手として真っ先に井手口陽介を挙げる。
 
「韓国は守備の集中力が切れやすいので、井手口にセカンドボールを拾われると恐い。また、日中戦でゴールを挙げた小林悠と昌子源にも注意が必要でしょう。昌子が決めた40メートルロングシュートは印象的でしたし、小林にディフェンスの裏を取られると厄介です」
 
 中国戦では課題も露呈したハリルジャパン。韓国との最終戦は事実上の決勝戦となるが、ソ・ホジョン記者は、「日本には課題が残っていますが、それは韓国も同じ。いい戦いになると思います」と予想する。勝負の行方に注目したい。

取材・文●慎 武宏(スポーツライター)
 
シン・ムグァン/1971年、東京都生まれ。韓国サッカー取材歴20年。近著に歴代コリアンJリーガーへのインタビュー集『イルボン(日本)はライバルか 韓国人Jリーガー28人の本音』(ピッチコミュニケーションズ)。