「大つけ麺博」が1杯500円に切り替えたワケ
「大つけ麺博 大感謝祭」では、さまざまな種類のつけ麺やラーメンが楽しめる(写真:筆者提供)
新宿駅東口を出て大久保方面に徒歩で5〜10分前後。西武新宿駅からほど近い大久保公園で「大つけ麺博 大感謝祭」が、11月1日まで連日開催中だ(原則11:00〜21:00、店舗入れ替え日の10月4日、11日、18日、25日は11:00〜15:00)。
今年は各店1杯500円で食べられる(写真:筆者提供)
「大つけ麺博実行委員会」の主催により、今年は9月28日から始まったイベントである。開催期間を「第1陣」から「第5陣」までの5週間に分け、それぞれの期間に9店ずつ計45店が出店。その名のとおりのつけ麺はもちろん、さまざまな種類のラーメンを来場者に1杯500円で振る舞っている。
ここ数年でラーメンイベントが激増
このようなラーメンにまつわるイベントが近年、全国各地で盛んに開かれている。10年前までは数えるほどしかなかったラーメンイベントだが、ここ数年で激増した。その数は1年で80に上るともいわれている。肉やビール、カレー、B級グルメなど、さまざまな食のイベントが展開される中でも目立つ動きの1つだ。
「ラーメンデータベース」によれば、この9月、10月だけでも以下のラーメンイベントが開かれている。
東京ラーメンショー 2017
大つけ麺博 大感謝祭
ラーメン女子博 in大阪 2017
ラーメン女子博in名古屋 2017
HOKKAIDOラーメン祭り2017
第7回 麺-1グランプリ in 館林
仙台ラーメンフェスタ2017
会津ラーメンショー
つくばラーメンフェスタ2017
関西ラーメンダービー2017
とんこつラーメン誕生祭
第11回北陸ラーメン博
酒田のラーメンexpo2017
ラーメンWARS 麺下統一八千代の乱
第十回 とびっきり!静岡ラーメンフェスタ
Koboパーク宮城 秋の麺まつり
岩手ラーメンフェスタ2017 in イオンモール盛岡
年齢層や性別も選ばず、どんな世代にも愛されるラーメンはフードイベントにはぴったりのコンテンツといえる。
全国のおいしいラーメンが結集するラーメンイベントは、ファンにとって普段食べられないメニューに出合えるチャンス。参加するラーメン店もイベントをきっかけにお店の名前を売る絶好の機会となる。双方のニーズが合致しておのずとイベントの数も増えていくという構造だ。
複数店舗のメニューを楽しんでもらう
一方、来場者の視点で見ると不満の声もある。イベントで出されているメニューの価格と量のバランスだ。
「ラーメンイベントのラーメンは値段が高い」という指摘は少なくない。平均すると1杯当たり800〜850円というのがラーメンイベントで出されるメニューの価格の相場だ。
ラーメンイベントに出店しているラーメン店の中には、イベントにかかわる収支が赤字となっているお店もある。場所代、人件費、設営費などのほか、具材やスープなどの食材にしっかりおカネをかけないと、舌の肥えたファンには満足してもらえないからだ。そうなるとおのずと価格設定は高めになる。とはいえ、1杯800〜850円の価格設定では、2杯以上を食べることに躊躇してしまう来場者は多いようだ。
2杯以上食べられないのは、量にも問題がある。「1杯食べたらお腹いっぱいになってしまった」というラーメンイベントが少なくない。実際の店舗で普通に出しているボリュームよりも麺量が少ないことは多いが、トッピングを豪勢に盛ることで、集客しようとするお店が目立つ。せっかく複数のラーメン店が集まっているのに、1店のメニューしか食べられないのはもったいない。出店者側に立っても新しいお客と出合えるチャンスが少なくなる。
量を昨年の6割ぐらいに抑えた(写真:筆者提供)
現在、開催中の「大つけ麺博 大感謝祭」はこうした課題に答えるため、各店1杯500円にして量を昨年の6割ぐらいに抑え、複数店舗のメニューを楽しんでもらう方針に切り替えた。トッピングのドカ盛りも禁止。女性でも2杯は食べられるボリュームとなっている。筆者も実際に食べてみると1杯だけで全然足りないワケでもなく、ある程度の満足感がある。見た目にもさみしさはないし、バランスの取れた量だと感じた。
ただ、出店者にとっては悩ましさもある。客単価が安いので、杯数をこれまでよりもたくさん出さなければ収支が悪化してしまう。ラーメンイベントの中には、ゆっくり作ることで行列を意図的に作り、人気があるように見せかける手法を取るお店もあるが、1杯500円となるとそうもいかない。今年の大つけ麺博ではこの手法を全面的に禁止しているそうだ。
本来のラーメンイベントの趣旨
見た目にもさみしさはない(写真:筆者提供)
そもそもラーメンイベントへの出店自体で儲けるケースは少ないとみて、目的をお店の名前を売るため、投じるのはマーケティング費用と割り切っているお店も多い。大つけ麺博実行委員会の井上淳矢氏は「ラーメンイベントは『お気に入りの1杯に出合うためのお祭り』であるべき。イベントでおいしいと思ったお店に実際に行っていただくのが本来のラーメンイベントの趣旨だと思います」と話す。
それとは別の次元で、出店者側にとって、ラーメンイベント自体の目新しさが薄れてきつつあるのは悩ましい。全国各地でこれだけの数のイベントが開かれると、飽和を感じざるをえない。ラーメン店の数も飽和状態にある今、イベントに足を運んでまでラーメンを食べたいというファンは一定数に限られてくる。今後は各イベント同士でパイを奪い合う中で淘汰が進むかもしれない。