ラグビー日本代表が、国内でテストマッチを開催している。6月10日に熊本でルーマニアと対戦し、17日には静岡でアイルランドと激突した。24日にもアイルランド戦がある。

 FIFAが国際Aマッチデイを定めているように、ラグビーにも世界各地で国際試合が行われるタイミングがある。ただ、その試合数はサッカーに比べると圧倒的に少ない。6月の3試合の後は11月の2試合だ。2017年は5試合だけである。サッカーの東アジアカップに相当する大会が今春に開催されたが、アジアでズバ抜けた力を持つ日本は若手主体のメンバーで臨んだ。

 16年9月にヘッドコーチとなったジェイミー・ジョセフには、幅広い権限が与えられている。日本代表を指揮しながら、スーパーラグビーに参戦しているサンウルブズを日本代表の強化の場所としている。スーパーラグビーとはオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチン、日本の5か国から18チームが参加する国際リーグである。

 ジョセフHDはサンウルブズのスタッフでないものの、彼の意向がメンバー選考にもチーム戦術にも色濃く反映されている。日本代表に選ばれる実力と資格━━資格とは、外国人でありながら日本代表に選出される条件だ──を持った選手が、日本代表と同じコンセプトで試合に臨んでいる。

 ラグビー日本代表の強化は、サンウルブズの“日本代表化”だけではない。サンウルブズのメンバーでアウェイゲームの遠征から外れた選手、日本代表入りを射程とする選手を集めて、ナショナル・デベロップメント・スコッドキャンプ(NDS)を開催している。日本代表の戦術や哲学を確認したり、あらかじめ触れ合ったりするこのキャンプは、代表チームの活動をよりスムーズにするものとして期待されている。

 代表強化の土台となる所属クラブでの活動以外に、サンウルブズとNDSを持つジョセフHDに比べると、サッカー日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は限られたスケジュールでロシアW杯へ向かっている印象だ。「もっと時間がほしい」と口癖のように話す彼の気持ちも、突き放すわけにはいかない気がしてくる。

 サッカー版サンウルブズの実現はかなわないが、国内組によるキャンプはスケジュール次第だ。数日間にわたる本格的な合宿が叶わなければ、集合翌日の午後に解散する1・5日でもいい。

 Jクラブの監督がもっとも気を揉むのは、合宿でケガをしないか、疲労を蓄積させて帰って来ないかのふたつだが、拘束期間を短くすることで各クラブの協力を取り付けるのは可能だ。また、ケガのリスクを抑えるために対人プレーを減らす(無くす)といった配慮もあっていい。チームコンセプトの周知徹底を最優先事項とするなら、ピッチ上でのトレーニングと座学を併用してもいいだろう。

 短期で一緒に過ごす時間を持つことで、ハリルホジッチ監督が選手を知ることも、選手同士がお互いを理解する手助けにもなる。

 もっとも、代表チームのボトムアップにつながるこうしたキャンプは、チームの立ち上げ当初に効果的なプログラムだ。ロシアW杯アジア最終予選が佳境を迎え、本大会まで1年を切ったチームに必要なのは、直接的な強化である。具体的にはマッチメイクだ。

 最終予選の行方が定まっていないため、10月と11月のインターナショナルマッチウィークのスケジュールは対戦相手が空欄のままだ。2010年、14年のアジア予選は6月に終了したため、8・9月以降のインターナショナルマッチウィークを有効活用することができた。ザック指揮下の前回は13年10月にセルビアとベラルーシ、同11月にはオランダとベルギーとのテストマッチにこぎつけた。

 最終予選の行方を睨みつつ、よりよい対戦相手とのマッチメイクを実現できるか。ここから先はハリルホジッチ監督だけでなく、日本サッカー協会技術委員会のマネジメント能力も問われる。

 ちなみにラグビー日本代表は、11月にオーストラリア、フランスと対戦する。W杯ホストカントリーの立場は、サッカーでもラグビーでも等しく眩しい。