東京23区や武蔵野市、三鷹市を営業地域とするタクシーの初乗り運賃が先頃、2キロメートル730円から約1キロメートル410円に引き下げられた。タクシー業界は利用者数の減少に歯止めが掛からず、高齢者や外国人などの“ちょい乗り”需要をいっそう開拓しようとの狙いだ。

 果たして効果のほどは――。都心部のベテランドライバーは「初日はビジネス街を中心に運賃1000円未満の近距離客の利用者が多少増えた」と語る。しかし、あくまで限定的なようだ。別のタクシードライバーも「乗客数は以前と変わらない。410円で降りるお客さんは、いまだに1人もいない」と嘆く。
 近距離客の場合、乗車回数を増やさないと収益にならない。ドライバーの中には歩合制賃金の人も多く、収入減になるのではと懸念する声が噴出している。

 そんなドライバーの心配をよそに、大手タクシー各社は「起爆剤に」と意気込む。短距離利用客の単価が減る今回の運賃改定には、初乗りから6.5キロメートルを超えると以前の料金体系よりも割高になるというカラクリが用意され、しっかり“値上げ”も行われているのだ。
 東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長も「全体の売り上げがプラスになれば、運転手にも還元できる」と語る。

 ここ数年、タクシー会社間の合併や再編が相次いだ。小規模な会社は経営が立ち行かず、大手グループに入れば御の字。そうでなければ、廃業や倒産を余儀なくされるケースも少なくない。
 「大手の傘下に入っても安泰ではない。経営方針が変わり、従業員ルールやノルマが課せられる。中には東京五輪を見据え、ドライバーに英会話を習わせる会社もある」(業界関係者)

 今後、『Uber』など配車アプリの拡大やライドシェア(相乗り)意識の高まり、さらにマイカー利用の“白タク”解禁の可能性さえも囁かれている。ちょい乗り開拓程度では、やはり拙劣と言わざるを得ない。