ラーメン店はなぜ食券制にしたがるのか――。このような議論が2016年末にネット上で話題となり、店舗の自動券売機導入について「客の無駄遣いを防止してくれる優しいシステム」「コミュ症ぼっちが入りやすい」など、さまざまな書き込みがなされました。

 慢性的な人手不足が叫ばれる外食産業において、誤注文や無銭飲食の防止、売り上げ集計の効率化など、自動券売機導入のメリットは大きいとされていますが、今回はそこからもう一歩踏み込み、ラーメン店に自動券売機が普及した理由について調べてみました。

サイドメニューの少なさが幸い

 飲食店舗用品の通販サイト「テンポスドットコム」を運営するテンポスドットコムの石原深さんによると、ラーメン店の“メニュー数”が幸いしているとのこと。「居酒屋などに比べると、サイドメニューが少ないからです。大半の店は、ラーメンとトッピング程度ですから、そういった業態に自然とマッチしたのでしょう」。

 都心部で運営している店舗であれば、導入する店舗が多いのが現状です。「例外としては昔からある地方のロードサイド店舗や、親子経営の老舗店くらい。それとは逆に、全国チェーンレベルになると導入していない企業が多くなります」。

 石原さんは、店主の修行先だった店舗が券売機を使っていたかどうかも関係していると指摘します。「修行先で券売機を使っていた店主は、その利便性を知っているため、ほぼ導入します。しかも『同じ型』の機械を自身の店でも使うケースが多いです」。

 券売機には「押しボタン式」と「タッチパネル式」の2種類があり、テンポスドットコムでは「価格が安いため、8割くらいの人が押しボタン式で買う」と石原さん。具体的な価格は「中古品で押しボタン式は60万円、タッチパネル式は80万円程度」。ちなみに新品だと、40〜50万の差があるそうです。

 高価なタッチパネル式の利点は「カラフルなビジュアルで、メニューを見せることができること」。ブランドのイメージやコンセプトに強くこだわる店舗は、ほとんどがタッチパネルを選ぶといいます。また、データの一括管理ができるため、企業戦略を立てやすく、複数店舗を運営する企業に合っているようです。

 加えて、防犯の意味もあるといいます。券売機を開錠した場合、本部に連絡が行くため、売上金の盗難を防ぐことができるといいます。「オーナーが自店舗にいない店舗には、特に導入メリットが大きいですね」。

新品購入が「隠れたトレンド」

 券売機は新品での販売や中古販売のほか、リースも強いジャンルです。しかし新規の単店舗の場合、生き残りが激しい業界ということもあり「リース審査が通りにくいのが現状です」。店主の修行先が有名かどうかは関係ないそう。そのため、「新品や中古を分割で購入するケースがほとんどです」。

 テンポスドットコムにおける、新品と中古の割合は五分五分。「しかし、中古は年数が経過するとメーカーのメンテナンス期間が切れるため、結局高くつくことになります。本気でラーメンで成功したいと考えている店主ほど、新品を購入するのは隠れたトレンドですね」と石原さん。

 また、ラーメン店は居抜き店舗の割合も多いため、券売機がそのまま残っている場合は「リース会社が現物を回収して、中古として私たちのような業者に売るケースもあります」。訪日外国人(インバウンド)市場の拡大については、「券売機メーカーにはさらなる多言語対応の製品と、軽量化を進めてほしい」とも。

 石原さんは最後に、券売機業界のトリビアを教えてくれました。

「『ラーメン二郎』などで見られるような、レトロタイプのプラスチック券売機はニーズがとても多い。しかし、すでに機械の生産もメンテナス期間も終わっているため、壊れたら最後。メニューも19種類しか載せられないため、決して便利とは言えませんが、いかんせん希少なので『取りあい状態』になっています。プラスチック券を製造する工場も年々減っているんですよ」

(オトナンサー編集部)