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月末の金曜日に企業の従業員らが早く退社し、外食や買い物に出掛けることで、消費を喚起しようという新たなイベント「プレミアムフライデー」が2017年2月から始まる。小売りや旅行、運輸各社などは、これに合わせた催しを検討しており、売り上げ増への期待を高める。だが、個人消費を引き上げるのは簡単でないとの見方は多い。

プレミアムフライデーは、米国の年末商戦「ブラックフライデー(黒字の金曜日)」を参考にしている。11月第4木曜日の祝日「感謝祭」翌日の金曜日を指し、大幅に値引きする小売店のセールに客が押し寄せて店が黒字になるという意味で、こう呼ばれる。経済産業省と経団連などの経済界が、これをもとに、個人消費の拡大を目指してスタートさせる。具体的には、企業や官公庁が足並みをそろえ、従業員らに15時をめどに退社するよう促す計画で、初回は2月24日の見通しだ。

「時間があれば消費に向かうという状況ではない」

だが、「一般企業の人が実際、どのぐらい早く帰れるか、見当もつかない」(小売業関係者)と経済界には効果について慎重な見方もある。一方、これまで金曜日の午後に買い物をすることがなかったキャリア女性など新たな顧客層を取り込む好機になるとの期待も高い。

意気込む業界の代表格が旅行業で、チャンス到来と商品開発に励む。エイチ・アイ・エスは2016年末から早々に「金曜の夜から旅に出よう!」と呼び掛けた旅行商品を発売。小田急トラベルは月末の金曜日に焦点をしぼり、「仕事帰りに婚活しよう」と銘打ったユニークな商品を企画するなど、業界全体で盛り上がりを見せる。

ただ、プレミアムフライデーが即、消費増につながるかには疑問も多い。一般に、余暇は消費増に結びつくと言われている。だが、「日本の現在の消費低迷は、強い節約志向が大きな背景であり、時間があれば消費に向かうという状況ではない」と、あるエコノミストは指摘する。節約志向を取り除くには、賃金の引き上げが不可欠であるうえ、長期的には政府が社会保障改革をしっかり進めていくことが肝要だが、いずれも改善に向けた明るい兆しは見えない。

プレミアムフライデーは「自宅でのんびり過ごす」が3割超

また、「もう物はたくさん持っているから、そもそも欲しいものがない」(ファイナンシャルプランナー)との声も多い。安売りセールはおろか、付加価値をつけた商品でもなかなか売れないという厳しい現状は、余暇を少々増やしたぐらいでは解決できない。

流通業界などが「プレミアムフライデーの中心対象」と期待するのは、やはり、お金がある40〜50代の男性。だが、この世代は非常に「疲れている」との調査結果もある。博報堂行動デザイン研究所が2016年10月に行ったアンケート(20〜50代の男女800人対象)では、プレミアムフライデーは「自宅でのんびり過ごす」が30.3%に上り、トップの「旅行」(31.5%)にほぼ並ぶが、40〜50代の男性では「自宅でのんびり」が約4割も占めた。

プレミアムフライデーが消費喚起という狙い通りに進むかは微妙なようだ。