東京の目黒区上目黒にある有名な「蛇崩(じゃくずれ)交差点」。タクシーに乗って「蛇崩を通って下馬方面に行ってください」なんて言ったことのある人も多いのではないでしょうか。実はこの「蛇崩」、今では地名としては存在しない場所なんです。というわけで、今回は「蛇崩」の名前の由来について調べてみました。


【東京の地名】「蛇崩(じゃくずれ)」の由来とは?



東京・目黒区上目黒にある「蛇崩交差点」。
中目黒や祐天寺、学芸大学などにゆかりがある方なら、聞き馴染みのある交差点かと思います。
大正時代までこのあたりは「蛇崩」という地名でしたが、現在この名前が残っているのは、この交差点だけ。
昭和に入り目黒区が誕生したのをきっかけに、地名としての蛇崩は存在しません。

「蛇が崩れる」と書いて「じゃくずれ」。
なんだかインパクトのある名前ですが、これは「蛇崩川」という川が流れていたことが由来です。

蛇崩川は現在もありますが、ほとんどが暗渠。
水源は世田谷区のJRA馬事公苑あたりで、下馬や祐天寺駅付近の支流と合わさりながら、目黒川に合流しています。
上目黒には「蛇崩川支流跡」というプレートも残っているので、昔このあたりに川が流れていたことを知ることができます。

なぜ「蛇崩」という名前になったのか……それにはいくつかの説があります。
ひとつは「大蛇伝説」。
江戸時代に編さんされた「新編武蔵風土記稿」という文献には、「昔、大水の際、崩れた崖から大蛇が出たことからこの地名が生まれた」との記述が。
その大蛇が現れたのが、この蛇崩交差点あたりだったとか。
記録がはっきりと残されているため、この説が最も有名ですが、真偽のほどはわかりません。

もうひとつは、蛇崩川が大変な暴れ川で、蛇行する水の勢いで大規模な土砂崩れが起こっていたから、とも言われています。
蛇行する川が起こす土砂崩れで、「蛇崩」。
なるほど、これは説得力がありますね。

かつては水の都だった江戸の町。
今は多くの川が暗渠になってしまいましたが、その川の跡を辿って散歩をすれば、はるか昔の景色を感じることができるかもしれませんよ。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「解明! 蛇崩伝説」として、6月8日に放送しました。

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