2022年10月に個人経営の飲食店を酷評する動画をYouTubeに投稿し、批判が相次いだ4人組YouTuberグループ「夕闇に誘いし漆黒の天使達」。UUUM所属のYouTuberグループでバンド活動も行っており、登録者数は60万人を超える。

問題視された動画は、Googleマップでレビューがついていない店を訪れ、初レビューを投稿するという企画(現在は削除済み)。メンバー4人は神奈川県内にある高齢女性が1人で経営するうどん店を訪れ、それぞれ異なるメニューを注文。事前に時間がかかると説明を受けていたが、テロップには「1品目がくるのに40分かかりました」とも表示されていた。

提供された食事は「うまい」と食べていたメンバーだが、店を後にすると「婆ちゃんのワンオペだったな」「急ぐ気がなかったのが腹立ちましたね」と苦言。会計時にもらったお菓子についても、「ムカつくしね」と悪態をついていたのだった。なお、動画では店名も紹介されていた。

メンバーが店を酷評する様子はTwitterでも拡散され、瞬く間に批判が殺到。グループは炎上を受けて2月7日に、次のように謝罪文を発表した。

《昨年にあげた動画ですが、非公開にさせていただきました。不快に思われた方、申し訳ありませんでした。さきほど店舗様に直接電話してこの度の件を謝罪させていただき店主の方には謝罪を受け入れていただきました。なお、本件に関しての店舗様への連絡はご迷惑になりますので、ご遠慮頂けますようお願いします》

だが、《電話で済ますって信じられません》《電話とか誠意の欠片もなくて草》と謝罪方法に厳しい声が上がっており、火に油を注いでいる。一方で、うどん店のGoogleレビューは現在、星5つの高評価に。ここ数日で、《応援してます》《頑張ってください》といった声援が続々と書き込まれているのだ。

■80代の女性店主は「気にしていません」と寛容な対応を

本誌は2月8日、渦中にあるうどん店の店主に話を聞いた(以下、カッコ内は店主)。店主は現在81歳の女性・Aさん。17年前に夫を亡くして以後、1人で店を切り盛りしている。

AさんはYouTuberが来た時のことは「覚えていない」といい、「そういう時は多分忙しい時なので、自分でも認識する余裕もなかったように思います。結構な時間待たせてしまったということは、前のお客さんが何人かいたと思うんですよ」と語った。

さらにAさんは、ネットでYouTuberの動画が炎上していることを把握していなかったようだ。

「若い人から謝罪のお電話はありましたよ。『動画を投稿してしまったことでご迷惑をおかけしました』と言っていましたよ。でも、私はそこまで気にしていませんので、『別に気にしていませんよ』という風に伝えました。私はインターネットをやっていませんし、私の耳に直接入るわけじゃないので構いません。多分、それ(YouTuberの感想)は本当なんだろうからね。(評価に対して)私から何か言い訳はしませんし、若い人たちが来てくれた時に迷惑をかけてしまったんだと思います」

■Googleレビューに応援続々も「繁盛し過ぎるのもあまり喜ばしくない」

普段は常連客がメインで、新規の客はほとんど来ないという。それでも予想外に混雑する時は、「時間がかかりますのでごめんなさい」と断るようだ。1人で営業するようになってからは、アルバイトを雇ったこともあったAさん。しかし店が暇だったため、アルバイトに辞められてしまったという。

「その後も1人でお店を続けてきましたが、70代の時に交通事故に遭って、その時は辞めるつもりでいたんですけど……。怪我が治って3年ぐらい経ったら、まだ身体が動いたものですから。それに、いつも来てくださるお客様に『店が開いていないと不便だ』って言ってくださる方がいたんです。私の年齢ではよそにお勤めも行けませんし、私も店が暇な方が身体的には楽ですからね。『体の動く限りやりますよ』ということで、自分の体調を管理するつもりで続けています」

もちろん、常連客たちはそうした事情を承知しているようで、Aさんは「お得意さんも(時間がかかるなど)覚悟の上で来てくださっています」と話す。

今回、YouTuberの行動が炎上したことで、Googleマップのレビューには応援の声が寄せられている。しかし、そうした反響は、Aさんにとって“困りごと”になりかねないようだ。

「今日も朝早くにお店にいらっしゃったお客さんがいましたが、見覚えのない方でした。お店の前で一生懸命に写真をとっていましたね(笑)1人、2人で来てくださるのはありがたいんですが、一度に3人以上で来店されますと、結局待たせてしまいます。

メニューも複数ありますので、それぞれに違うメニューを注文されますと時間もかかりますし。これまで暇だったので、普段は食材も沢山は用意していないんです。今日も予定外のお客さんがいらっしゃったので、いつもより早くに店を閉めてしまいました。あまり繁盛し過ぎるのも、私にとってはあまり喜ばしくないですね(笑)」

Aさんのように事情を抱えながら営業を続ける店は他にもあるだろう。レビューがなかろうと、土足で踏み込むようなマネは許されないはずだ。