有給休暇が自由に取れない会社は淘汰される時代に?

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労働者の権利のはずが、有給休暇取得率は低水準

あなたの会社では、有給休暇を自由に取れていますか?

厚生労働省が発表した「平成26年就労条件総合調査」によると、日本の民間企業における有給休暇取得率は48.8%という低水準にあります。有給休暇は労働基準法第39条で定められた労働者の権利であるにもかかわらず、平均取得率が過半数にも満たない状況であり、国はこれを少しでも増やそうと対策を講じています。

これが、2016年4月から施行予定の「有給休暇の取得義務化」です。


法改正で有給休暇の取得を義務づけ。罰則も設けられる予定

現在は、有給休暇を保有する労働者が書面などで有給休暇の申し出を行い、会社が許可または承認した場合に取得できる、という制度になっている会社が多いでしょう。しかし、現状の制度では「職場に取りにくい雰囲気が漂っている」「ぎりぎりの人数でやっているので有給を取れる状況ではない」というような理由で取得を躊躇してしまったり、また、「有給を申し出ると上司に嫌味を言われる」「うちの会社に有給制度はないと言われた」というような事例もあり、これらが有給取得率が低水準にある要因であると考えられます。

法改正では、本人の保有する有給休暇のうち最低5日間は会社側から取得させることを義務づける方針であり、有給未消化の社員が多い会社には罰則が設けられる予定です。

【有給休暇義務化の概要 ※2016年4月施行予定】
・各社員が年数日分の有給休暇を取得するよう企業側に義務づける。
※義務づける日数は年間5日の方針
・一般社員だけではく、管理職も対象となる。
・企業が有給の時期を指定する場合は、従業員の希望を聞く制度にする。
・中小企業を含む全企業を義務化の対象とする。
・未消化の社員が多い企業には罰則規定を設ける。


有給休暇を有効に活用できる企業へシフトチェンジが求められる

ただし、法律で義務づけることにより、多少は改善につながると思われますが、これだけでは根本的な解決策にはならないでしょう。実際、有給休暇に対する考え方は、経営者と従業員で大きく異なる場合が多く、特に中小企業では、限られた人材で業務を行っているため、有給を取得されることで残った従業員へ負担が集中したり、代わりの人材がいなくなるため仕事が受注できなくなるなど、経営者は損失につながると考えてしまう傾向にあります。

これからの対策として必要なのは、この差を埋めることではないでしょうか。有給休暇を自由に取得できることにより、労働者だけではなく、会社側にも次のような多くのメリットがあります。

・リフレッシュした気持ちで仕事に取りかかれるため、仕事の能率が上がる。
・会社への満足度が上がり、従業員の定着率が上がる。
・福利厚生の向上や会社の取組が評価され、優秀な人材を確保しやすくなる。

今後は、このようなメリットを生かした賃金制度や人事制度を構築できる企業、有給休暇を有効に活用できる企業へのシフトチェンジが求められるでしょう。


【田中 靖浩:社会保険労務士】


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