超一流の習慣「手荷物はカバンひとつ。機内は貴重な読書タイム」

ファーストクラス──。そこは、搭乗者のうちたった3%の人間しか立ち入ることのできない“知られざる世界”である。そんな特別な空間で、真のビジネスエリートたちが見せる素顔とは……。そして彼らにとってはごくごくあたり前の習慣、「気遣い」とは……。

長年CAとして勤務していると、ファーストクラスの搭乗者であっても、機内に持ち込む手荷物の量で“超一流”かそうでないかがひと目でわかるようだ。

「とにかくファーストクラスに乗り慣れた常連のお客様は、手荷物が少ないのが特徴です。身のまわりがコンパクトでシンプルなのです。もちろん、チェックイン時に荷物をお預けになっていたり、秘書の方が別のクラスに搭乗されたりするので、持ち込む必要がないのかもしれませんが」

男性ならビジネスバッグひとつ。女性でもハンドバッグひとつが定番だ。たまに大きな手荷物を持って搭乗してくると、すぐにビジネスクラスからの「アップグレード客」だとわかるのだそうだ。

「“超一流”の方々は、身のまわりのものを選択し、要不要の仕分けができる人が多いのです。ビジネスクラスの方々はとかく大きなバッグを持ち込みがち。機内では絶対必要なものさえあれば十分なのですが、なぜかPCはじめ、あれこれとビジネス関連書類などを大量に持ち込まれ、フライト中も常に“超多忙”のご様子が見て取れます……」

ビジネスクラスでは約7割の乗客が機内で仕事をしているそうだ。しかし、ファーストクラスの乗客も同じビジネスマンである以上、忙しいのは同じ。だが、ファーストクラスで仕事をしている人は、ほぼゼロだという。

「多くの方が会話を楽しんだり、読書をしたり、シートを倒して休んだりと、リラックスした時間を過ごされます。みなさん機内ではビジネスモードをオフにして、日常を切り離していらっしゃるご様子でした」

リラックス&リフレッシュモードのファーストクラスの乗客には、機内での時間を読書タイムに充てている人も少なくないという。とくに最近では、ファーストクラスは完全プライベートブースが多く、十数時間をゆったり過ごせる快適な仕様となっている。

「手荷物はシンプルですが、みなさん必ずと言っていいほど、本を携帯されます。多い方で、10冊以上の本をお読みになる方もいらっしゃいました。そういった方は紙袋に本をどっさり入れて機内に持ち込まれます。ファーストクラスのお客様にとって、フライト時間のほとんどが読書タイム。とにかくみなさん熱心に本を読まれていました」

社会的地位がある人でも、マーカーで印を付けたり、気になる個所に付箋を貼ったりしているという。彼らにとって読書は単なる趣味ではなく、人生や仕事をより向上させるためのヒントを探す、ある意味“投資”。蓄積した情報をアウトプットする必要のない機内では、新たな情報をインプットする時間に充てているのだ。

ただし、彼らが読んでいるのは難しいビジネス書ではない。歴史小説や伝記といったジャンルが目についたという。

読書家の乗客の中には、一冊一冊読み終えるごとに書評をメモにまとめたり、その本の読みどころを書き出すこともあるようだ。

「到着後、『悪いけれど、本を処分しておいて』と頼まれるのですが、その際、本と一緒にご自分の書評を渡してくださるのです。わたしたちCAは、その書評を拝見し参考にしながら、読みたい本を分け合うこともありました」

ファーストクラスの常連たちの手荷物が“シンプル”で“コンパクト”であるそのわけは、リフレッシュに不要なものは機内に持ち込まないからである。必要最低限の身のまわり品、そしてフライト時間を有意義に過ごすための本があれば十分なのだ。

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CA−STYLE主宰 美月あきこ(みづき・あきこ)
日系、外資系航空会社の国際線キャビンアテンダント(CA)として活躍後、女性の転職・就職を支援する会社CA−STYLEを立ち上げる。人財育成コンサルタントとして、現在も全国各地で講演・研修を行う。著書に、12万部のベストセラー『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』などがある。

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(文=戌亥真美 コメンテーター=CA−STYLE主宰 美月あきこ 撮影=荒井孝治)