YouTube、定額制の音楽配信サービスを夏にも開始へ。契約を拒むインディーズに動画排除を警告

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YouTube が、この夏にも定額制の音楽配信サービスを開始します。サービスの開始に先立ち、契約に同意しないインディーズレーベルの動画を YouTube から排除する可能性があると、 Reuters や Financial Times、米 Billboard などが報道しました。状況によっては Radiohead ら一部の著名アーティストの楽曲コンテンツも YouTube で視聴できなくなるかもしれません。
日本ではいまだに CD が音楽コンテンツ販売の80%を占めるとされますが、海外では定額制の音楽配信サービスが勢力を拡大しています。先日、有料会員数が1000万人を超えたと発表した Spotify や、アジアへの進出著しい Rdio はその成功例です。アマゾンも今月、米国でプライム会員向けに Prime Music をスタートしました。また、Apple は Beats を傘下に収めることで Beats Music を手に入れ、今後の展開が注目されています。

Google 傘下の YouTube も、昨年より定額制の新しい音楽配信サービスを開始すべく準備を進めてきました。新サービスは、基本的には無料で提供されるものの、広告表示をなくしたり楽曲のオフライン再生を使うには月額料金が発生する形になると言われます。

YouTube はすでにユニバーサル、ソニー、ワーナーといったメジャーレーベルと契約を済ませたものの、各国のインディーズレーベルに対しては契約交渉の難航が伝えられていました。Googleと合意に至っていないレーベル側の主張によれば、理由は他の配信サービスに比べて厳しい契約条件と、交渉の余地を与えない強引さにあるとされています。

インディーズ側の業界団体 WIN (Worldwide Independent Network)は、新サービスへの契約に同意しないレーベルはそのコンテンツを YouTube から削除するという、なかば脅しのような要求を突きつけられていると主張します。

英国のインディーズ業界団体 AIM(Association of Independent Music)、米国のA2IM(American Association of Independent Music)なども新サービスの契約内容に反発しており、同じ意見をもつ各国の団体とも歩調を合わせ、欧州委員会や FTC(米連邦取引委員会)に審査を求めるなどの動きを見せています。

これに対し YouTube のコンテンツ担当責任者 Robert Kyncl は、業界全体の95%におよぶレーベルとすでに契約を締結済みとしたうえで、当初は交渉するレーベルすべての同意を得たかったが、やむを得ずサービスを開始することにしたと話しています。

メジャーのアーティストしか聴かないから、インディーズレーベルが削除されても別に構わないと思う人もいるかもしれません。しかし、世界的に有名なアーティストでも所属レーベルがインディーズというケースは多々あります。たとえば、Radiohead や、Vampire Weekend、ジャズ/ソウル/ポップシンガーの Adele らは英国のインディーズレーベル XL Recordings 所属であり、彼らの動画も YouTube で見られなくなるのではと懸念の声があがっています。

ただし、YouTubeは定額制音楽サービスの実施予定や、一部のインディーズレーベルと契約できていない状況は認めたものの、具体的なサービスの詳細については明らかにしていません。このため、契約していないアーティストのコンテンツがどのような扱いになるのか、これまで無料で(広告付きで)見られていた動画が消えるのか否かなどは、サービスが実際に始まってみないと分かりません。

なお、Google は6月25〜26日に開発者向けカンファレンス「Google I/O 2014」を開催予定です。YouTube の定額制音楽配信サービスについても、なんらかの発表があるかもしれません。

下はもうすぐ視聴できなくなるかもしれない Adele の Skyfall 。