「天誅 闇の仕置人 仕置まんじゅう」
公式グッズがすごい。

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3月も半ば。1月からはじまった連続ドラマも最終回が近づいてきています。

数あるドラマの中で、密かに気になっていたドラマがありました。
3月14日に最終回を迎える「天誅 闇の仕置人」(CX19時57分〜)です。

警察ドラマがたくさん制作されている中で、
警察には任せておけない!と立ち上がる一般市民たち(といっても、かなり個性派たちなのですが)のドラマです。

仕置人の面子は、ふだんは、息子の嫁いびりしている姑(泉ピン子)、その姑に雇われている女忍者(小野ゆり子)、古武道の先生(京本政樹)、元・空き巣(柳沢慎吾)、おネエのスナックママ(三ツ矢雄二)。以上5名。
キャラ設定もすごいし、演じてる俳優もすごい。
なんていうか、ブレがありません。

イジワルなお姑さん役の泉ピン子って、テレビの前の誰もが思う泉ピン子のイメージです。
外れクジなしって感じです。
京本政樹がクールに古武道をする姿もハマっていますし、三ツ矢雄二がおネエ言葉でクネクネキャッキャしているところも、違和感が全くありません。
柳沢慎吾は元・空き巣という影を背負っていますが、人の好いお調子者ということで、みんなの知っている「慎吾ちゃん」そのものです。

それはわかった。でも、忍者ってなんなの? っていう疑問は、もうちょっとお待ちください。

ドラマを見ているというよりも、バラエティー番組に出ている俳優たちの印象を、まんまドラマに持ち込んでいるような、親しいやすいキャラ設定です。
もっとも、そもそもは、代表作のイメージが俳優のキャラクターと重ねられてしまったようにも思います。

卵が先か鶏が先か、もはやわかりませんが、
姑ぽさ、必殺仕事人ぽさ、気のよい人ぽさ、おネエぽさ。「ぽさ」の最高峰の集まりです。

泉ピン子と世間からはみだした仲間たちが、密かに世直し活動を行い、DV、振り込め詐欺、保険金殺人などの事件を解決していきます。

ピン子さんはこれまでも、渡る世間は鬼ばかりな世界に存在していましたが、それが家族問題から、もっと広い社会派問題に拡大されたのです。

とはいえ、これは、「必殺仕事人」を代表に、昔からよくある、庶民がエライ人に代わって世直しするという、復讐ものです。

近年のフジテレビドラマですと「ジョーカー許されざる捜査官」が復讐ものでした(主人公は刑事でしたが)。

被害者が泣き寝入りさせられがちな問題に、しっかり決着つけてくれるドラマは、視聴者の大好物。
「天誅」は、その黄金パタ-ンに、少々異色な部分があります。

世直し仲間たちの中に、「女忍者」が紛れ込んでいるのです。

どういうこと? 
どんなに個性派の仲間たちと言っても、2014年の日本に、ホンモノの女忍者は、目立ってしょうがありません。
忍者なのに目立っちゃダメでしょ。

なんで忍者?

京本政樹の時代劇ぽさを少し盛ってみた?と思いましたが、この女忍者、戦国時代から現代へタイムスリップしてきたという、意味不明な設定なのです。
意味は一応あるんですけどね。

いろいろあって、見知らぬ時代の日本に紛れ込んでしまった女忍者は、泉ピン子に助けられます。
そして、ピン子さんの命令に従って、警察の目を逃れてのうのうとしている悪者に、驚異的な身体能力でお仕置きをするのです。

正直、女忍者がいなければ、京本政樹くらいしか犯人に太刀打ちできそうにありません。

お姑ピン子は「天誅!」と号令をかけるだけだし、気のよい慎吾ちゃんもおネエママも、
弱くても弱いなりに、知恵と工夫で活躍するのですが、大きな仕事はなかなかできるものではありません。

主に、全身黒ずくめ、フードかぶった(女リンダマンかよ)女忍者が飛んだり回ったり切り裂いたり、痛快アクションを見せてくれます。

そして、その時のセリフが溜まらないんです。

「正義など私には、ない。にぎり飯ひとつ分の仕事をする。ただ、それだけ」

にぎり飯ひとつ分の仕事!
この慎ましさが、かっこいい!!

先週放送の第七話(3月7日)では、ついに犯人に「おにぎりなんかいくらでもやるから助けてくれ」(だいたいこんな意味)と言われてしまいました。いや、ごもっとも。

でも、女忍者は当然、無視です。おにぎりは
もっと重要な象徴です。

欲望ばかりが肥大した、その結果としての犯罪に対して、正義の追求や報酬などが目的ではなく、日常における、にぎり飯たった一個のために自分の仕事を一生懸命やるという、女忍者の生き方は、おそらく、戦国時代なら庶民の誰しもがもっていた気持ち。
これは、現代を痛烈に批判していると言えましょう。

本当は、泉ピン子の「天誅!」を、半沢直樹の「倍返しだ!」のように流行らせたかったのだろうなあ、と思います、制作側は。

ピン子さんの「天誅!」の時の迫力は、半沢直樹のパワーに勝るとも劣りません。いえ、半沢よりもコワイです。

さて、本日、いよいよ「天誅!」も聞き納め。最終回です。
泉ピン子演じるお姑が、嫁いびりだけでは飽き足らず、世直しをはじめてしまった重いワケがありまして、そのきっかけになった事件の真実が明らかになります。
女忍者と姑との、時代を超えた因縁もわかるようです。

「天誅」「握り飯一個分」が耳に残ってしまい、これで終わりだなんて寂しい。
京本政樹、柳沢慎吾、三ツ矢雄二のキャラもいいし、シリーズ化してほしいです。
「渡鬼」に続く泉ピン子さんの長寿番組にならないのかしら。
(木俣冬)