高橋一成 1984年世代(ハチヨン世代)のメンバーと株式会社人狼を設立。取締役に就任。持ち前のユニークなキャラクターと丁寧な解説で、さまざまな人狼イベントの司会を務める。「人狼〜嘘つきは誰だ?〜」(フジテレビ)では、人狼のスペシャリストとして講師を担当した。「人狼」に関する話題やイベント情報をツイッターで発信中。@kazu19850101

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大人気のゲーム「人狼」。テレビ番組やイベント、舞台と様々なメディアに進出し、驚くほどの勢いで広まっている。でも、いざやってみようとすると、ルールが複雑でとっつきにく印象があるのも事実。どうしたら初心者にも楽しめるのか。『決定版 人狼ゲームが100倍楽しめる本』を出版したした高橋一成さんに聞いた。

───私も人狼を何度かプレイしたことがあります。ルールが複雑で、覚えるのが正直大変ですよね。

高橋 それは人狼初心者の方によく言われます。ルールもそうですが、「ゲーム中に何を話したらいいか分からない」「ゲームの中でどういう風にふるまえばいいのか分からない」「どういう風に考えたらいいのか分からない」っていうことの方が大きいみたいです。でも、すでに出版されている人狼関係の本には、そういうことは漠然としか書いてないんですよ。そこで、今回出版した『決定版 人狼ゲームが100倍楽しめる本』には、そういう時のふるまい方を書きました。

───具体的に言うと、どういうことですか?

高橋 例えば、28ページに「騙り(人狼が役職者のフリをして嘘をつくこと)と疑われてしまったら」とあります。ここでは「僕は昼のターンに発言が少ない人の情報がほしくて夜のタームに○○さんを予言しました。その結果○○さんは市民でした。あなた(本物の予言者)はどういう理由でその人を予言したんですか?」と書きました。ゲーム中にこういう風に言うんだよ、というセオリーを描いているんです。

───こういう時にはこういう風に言って、こういう風にふるまいましょう、っていうマニュアルみたいなものですね。

高橋 そうそう。こういうことを書いたのは、この本が初めてです。実はこれ、リスクがあるんですよ。手の内をバラしてることになるし、例えば先ほどの「騙りを疑われてしまったら」のセリフは、人狼だけでなく村人も言えますよね。どっちが言うって決まってない。だから「そう言うんだったら、それを言ったあなたが逆に怪しい!」となる可能性もある。人狼にはこうすれば確実に上手くいくという方法がありません。だからといってセオリーを書かず、やってく上で覚えなきゃいけないことを書かないのは上自然すぎる。だから、もしかしたらこの本は叩かれるかもしれないですね。「人狼はそれ言わないでしょ」とか。

───炎上覚悟ですか。

高橋 でも、初心者は何を言えばいいのか分からない状況で何も言えずに殺されて、何が何だか分からないまま終わっちゃうと、人狼を楽しいと思えないでしょ。だから一言でも何か言えるようになるセオリー本があるといいなという思いで書きました。もう1つ紹介しますと、例えば最後の用語解説のところで、「CO(カミングアウト)」の説明に、さらに例として「『預言者がいたら今COしてください』=預言者が残っていたら、自分が預言者であることを公開してください」と書くと、実際にその言葉を使ってるところをイメージしやすいじゃないですか。

───確かに、ルール以外にも、こういうふるまい方はどうやって覚えるんだろうと疑問でした。

高橋 そうですよね。普通はゲームの中でいろんな人の話しぶりを見て、ああいう風に言うんだ、と覚えていくんですよ。OJTで覚えるんです。この本は、OJTではなくて座学で覚えて、それを実践してみようよ、その方が飲みこみが早いよ、というコンセプトです。さらに言うと、この本を読んで「ああ言う時もあれば、こう言う時もあるよね」と議論が活性化されれば嬉しいなと思いますね。

───そうやって問題提起もしているわけですね。

そういえば、先日NAVERまとめのホットエントリに「滑狼」というイベントをを解説したまとめが掲載されていて、5万PV以上を集めていたのですが、滑狼は実際に人気なのでしょうか?

高橋 はい。僕も見に行ったことがありますが、かなり盛り上がってますよ。人狼お笑いライブみたいな感じですね。大喜利をやって、誰かがわざと滑ってる解答をするんですが、それを見抜くんです。

───滑狼について詳しく教えてください。

高橋 昼間に会議をして人狼を追放したら勝ち、できなかったら滑狼の勝ち」というところは普通の人狼と一緒です。普通の人狼と違うところは、人狼役の滑狼がいて、あとはボディガードに近いマッスル芸人、大御所芸人、シュール芸人、裏切り者がいます。そして、トークテーマとして昼のタームに大喜利のお題が出されるんです。プレイヤーはそれを30秒以内に解答するんですが、その中で滑狼はあらかじめ滑ってる解答を与えられている。シュール芸人はシュールな答えを書かなきゃいけない。大御所芸人は30秒以上の時間が与えられます。そういう色々な設定があって、話し合いをして、「お前滑ってるから滑狼じゃねえの?」「違うわ!実力だわ!」とか、会話が生まれる。実力だったらそれはそれで問題だろ(笑)、と結構面白いんですよ。

───それ、テレビでやっても面白そうですね。

高橋 そうそう。もっとフィーチャーされてほしいんですよね。あとは芸人が舞台上で人狼をしているのを見られる「芸人狼」もオススメです。ラバーガール、キングオブコメディ、THE GEESE、ラブレターズなどが出てます。芸人狼は人狼をやりつつとても楽しめる要素がたくさんあります。芸人さんの普段のやりとりや持ちネタをふりあったりと、観客をとても楽しませてくれます。こういったシーンが増えるとこれまで人狼と縁がなかった人も「え、人狼おもしろそうじゃん」と思っていただけるのではないかなと思います。

───そういった、イベントや舞台形式の人狼は盛んなんでしょうか?他にも、声優さんが人狼をするイベントがあると聞いたことがあります。

高橋 声優さんのイベントは、4月23日(水)に行われる「人狼バトル 〜animate village〜」ですね。逢坂良太さんや平川大輔さんを始めとする人気男性声優さんたちが人狼をプレイします。ドイツゲーム@shibuyaの児玉健さんの監修です。ちなみに、女性声優さんのイベントは去年の秋に行われていて、2月12日にDVD「声優DVD企画 人狼バトル~missing girl in fairyland~」として発売されています。こちらにも小松未可子さんや悠木碧さんなど、人気声優さんが出演しています。

───どうしてこういうイベントが開かれるようになったんでしょうか。

高橋 人狼をプレイすると、その人の個性が出ます。だから、知っている人が人狼をやっているのを見るのは面白いですよ。人狼は今のように有名になる前から、舞台俳優さんが顔合わせをするときに使われていたそうです。役になりきる、嘘をつき通すという側面がインプロ(即興演劇)に近いんでしょうね。それを見せ物にしているわけです。有名人という、テレビなどを通してキャラクターを知っている人が人狼をやるのが、視聴者にとって面白いってことで企画されてるんだと思います。
───自分でプレイするだけでなく、人狼はそういった楽しみ方もできるんですね。

高橋 僕は個人的にお笑いが大好きなので、滑狼や芸人狼を通して人狼を知る人が増えてくれたらいいな、っていう思いもあるんですよ。

高橋さんおよび株式会社人狼が発信する人狼のイベント情報は、ツイッターアカウント以外に、株式会社人狼のオフィシャルサイトでも発信中。また、3月7日(金)深夜1:30から放送される「人狼〜嘘つきは誰だ?〜」放送に併せて、高橋さんはYouTubeでルールやテクニックの解説を務める。また、『決定版 人狼ゲームが100倍楽しめる本』の発売イベントや、女子大生とか読者モデルが人狼をするイベントなどを企画中とのこと。
(坂本茉里恵)