学生とプロ、あわせて100人近くが集まった「ゲーム業界をめざす君へ2014春」

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ゲームクリエイターになりたい! でも、どうやって?

そんなに難しいことじゃありません。エントリーシートを提出して、筆記試験と面接を受けて・・・。就職活動自体は、他の業界とかわりません。漫画やアニメなどと違い、ほとんどが会社雇用の社員クリエイターという点が、ゲーム業界の大きな特徴なんですよ。

ただ、「クリエイター」というだけあって技術職ですから、ほとんどの企業で作品提出が求められます。企画書や自作ゲーム、CG、デザイン画などです。ここで多くの学生が困っちゃうんですよね。作り方がわからない。自分のレベルが通用するか不安。相談できる友達がいない・・・。こんな状態で就活に挑んで、ボコボコにされてしまう。人によっては今、まさに修羅場の真っ最中かもしれません。

そんな学生に対して、就活の「素振り」をするイベントが3月1日に開催されました。東京・渋谷のGMO Yoursで開催された「ゲーム業界をめざす君へ2014春」(主催:同実行委員会)です。学生が個人制作の作品を持参して、プロに批評してもらったり、アドバイスがもらえる内容で、当日は学生が約60名、プロが約30名参加。午前11時から午後7時まで、みっちりと交流が行われました。

イベントは二部構成で、前半は学生が机に座って作品を展示し、プロが周回して気になった作品を批評していく展示会方式。後半は逆にプロが着席し、学生が列を作ってプロに質問できる面談形式です。机は「ゲームデザイナー志望」「プログラマー志望」「アーティスト志望」の3グループで固められ、職種をまたいだ面談も可能。そもそも、こういったイベントに参加する時点で、かなり意識が高い学生ばかりなので、みな大いに刺激を受けたようです。

イベントの発起人は元カプコンで「バイオハザード3」などの開発に携わり、現在は「傭兵」として大手企業を渡り歩いている、ゲームデザイナーの川村泰人さんです。ゲーム専門学校で講師経験もある川村氏は、学生に刺激を与えられる場所を作る必要性を実感し、2011年秋から有志を募って、年一回の学生向けイベントを実施してきました。

当初は学生がプロの講演を聴く座学形式でしたが、2013年秋から作品を介した交流形式に移行しました。その時に学生もさることながら、思いがけずプロからも評判が良く、半年後のこの時期に開催が決まったそうです。

そうなんです。参加したプロはゲーム業界の第一線で活躍している、油の乗りきったクリエイターばかり。現場で今、どのような人材が求められているか、肌で感じている人たちです。そんな彼ら・彼女らが、日常業務に忙殺されながらも、みなイベントの趣旨に賛同し、ボランティアで参加。動機は人それぞれですが、若い人材を育成しなければ、業界の未来が先細りになってしまうという、強い危機感があったようです。

そんなプロたちが終了後、異口同音に語ったのが、学生の作品や業界をめざす姿勢に刺激を受けたという声でした。「ひとりで作業や結果を出してると気づかない事やヒントをちょっとでも持って帰れたならば、もう立派に業界を目指していけることでしょう」「実力が到達しなければ絶対採用は出来ないけど、いくらでもアドバイスや手助けなら出来るヨ」などと、ネット上では激励の書き込みがずらり。「人に教えることは、自分が教わること」というコトバは真実でした。

また見学参加した専門学校の講師からは「地方ではプログラムやグラフィックと比べて、ゲームデザインについて教えられる人材が少なく、羨ましい」という声も聞かれました。他に2013年秋・2014年春と連続で参加した学生の中には「少しは形になった企画書を書けるようになっている…(かもしれない)位には思っても良いのかなと。前回よりは評価をいただくことが出来た気でおります」と手応えを感じた者もいたようです。

開会式で学生に対して「君たちは何者なのか」と語りかけた川村さん。企業にとって新卒採用は多大なコストがかかるため、学生側も自分たちの価値を、何らかの手段で証明する必要があります。特に近年では無償または安価で使えるデジタルツールが普及しており、作品制作にかかるコストが激減。川村さんは「ゲーム業界で仕事をしたければ、自分を魅力的に思わせる努力を、イヤでも続けなければならない」といいます。

もっともスマホゲームをはじめ、一人でゲームを作って世界に販売することも可能です。しかし川村さんは「そうしたいなら、一人でゲームを作るべきで、雇われようとするのは迷惑です」と一刀両断。一方で「企業に雇われても、自分がやりたいことは絶対に捨てないで欲しい」と続け、いつか自分が本当に作りたいゲームのために、腕を磨き続けることが大切だと語りました。

「時には周りと衝突したり、チームを外されたり、会社を辞めることがあるかもしれません。しかし、それがゲーム作りに対する誠実さの結果だとしたら、それは必然だと思います。逆に会社で雇われるうちに『やりたいこと』を忘れる人や、言われるがままにゲームを作り続ける人もいます。そういう人たちを反面教師として、就職後も粛々と実力をたくわえ、最後にやりたいことができる人間になってください」(川村氏)

こんな風にガチトークが連続の川村さんだけに、参加したプロも熱い人ばかり。大半が実行委員の個人的な知り合いで、趣旨に賛同したクリエイターばかりなので、交流会も面談の延長戦があちこちでが続いていました。そもそも、アルコール抜きであそこまで熱く語り合える大人の集団って、それだけで貴重というか、素晴らしいというか・・・。参加した皆さん、本当にお疲れ様でした。こうした取り組みが、もっと広がると良いですね。

なお、実行委員会では本年秋に、次回の開催を予定しているとのことです。
(小野憲史)