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我々は既にデジタルライフの多くをグーグルに捧げている。次は車で移動する時間を捧げる番だ。

メディアはグーグルの自動運転車がお気に入りで、世界中の会社員達が毎日通勤で車を運転することから解放してくれる、まるで夢の技術であるかのように報じてきた。先月開催された2013年ロサンゼルス・モーターショーで、グーグルの自動運転プロジェクト責任者のロン・メッドフォードは、同社の理念である「don’t be evil(邪悪になるな)」を思い起こさせるようなコメントをしている。

自動車業界(やその他の業界)の仲間達が我社を、彼等とは違う方法で世の中の役に立とうとしている異端児と思わないでくれる事を願います。

メッドフォードの発言は、自動運転車の実現でドライバーが運転で失う時間を取り戻し、効率的に使えることができるようになる、ということを示唆しているのではないか。確かにその可能性はある。

ただ、こんな考え方もある。控え目にみてもアメリカ人は一日あたり1時間は車を運転しており、その時間はパソコンやスマートフォン、テレビ等の画面に接していない。仮にアメリカの20万人を超えるドライバーのごく一部でもグーグルの自動運転車に運転を任せ、空いた時間でインターネットに接続することになれば、グーグルの広告に接する時間も増え、結果的にグーグルが一番得をする事になるのではないだろうか。

多くの人は、センサーやレーダー、クラウド上の交通情報、そして自動車の処理能力に自分の安全を託すことに不安を覚えるようだ。この点について私はあまり気にしていない。コンピューターが間違いを起こす確率は、人間が誤りを犯す確率よりはるかに少ないと思うからだ。むしろグーグルの自動運転車が、我々の乗車体験をどうやって「効率化」するかの方が気になる。

次の交差点は「マトリックス」

グーグルは既に、インターネットの検索内容、使うメディア、電子メール、購買情報そしてソーシャルネットワークにおける個人情報から位置情報まで、我々のあらゆる情報を得ている。それなのに、我々の個人情報に対するグーグルの飽くなき欲求は、まだ満たされていないようだ。

2010年には、我々の近隣の人々(それには、ホテルを出るカップルや人工妊娠中絶に反対する人達も含まれる)の映像を集めることを目的とした、カメラやレーザー、GPSを備えたグーグルのストリートビュー撮影車が、セキュリティー保護されていない家庭用無線ネットワークから電子メール、ユーザー名やパスワード等の情報を盗んでいたことが発覚した。グーグルは誤ってこれらの情報を収集したと釈明したが、2012年のFCC(米連邦通信委員会)の調査によると、そうではないようだ。

グーグルは我々を、自動運転車に誘っている。何も操作しないで、車が勝手にカーナビに設定した目的地に連れて行ってくれることがどんなにカッコイイことか、我々に語りかけているのだ。そう、何も問題など起こるはずがない、と。

実際グーグルの自動運転車は、我々が持ち歩くデジタルデバイスを企業がコントロールすることから、我々を運ぶ車を企業がコントロールする方向へシフトしていくことを意味する。

リモート・コントロール

自動車メーカーは我々の行動を記録し始めている。2013年2月、テスラモーターズがニューヨークタイムズ紙と走行テストの論評をめぐって対立した時、同社は車のコンピュータシステム(GPSの座標と同社が提供する車向けの各種サービスにワイヤレスで接続する機能)に記録されたデータを、自社の正当性の根拠としたのだ。

つい先月には、同じくテスラモーターズの高級電気自動車「モデルS」2台が、走行中に道路にあった破片を轢いたことが原因で相次いで炎上する事故が起きた。そこで同社は、車のプログラムを更新し、高速運転中には車高を上げる設定を追加した。所有者には、この更新を受け入れるかどうかの選択肢は用意されていない。

ルノーはフランスで、Zoeという電気自動車を販売している。ただ走行に必要なバッテリーは、月単位のレンタルでしか提供されていない。(これは購入の初期費用を安く抑え、宣伝程には長持ちしない高価なバッテリーに対する消費者の不満を和らげるための戦略だ。)バッテリーのレンタルスキームは問題ではないが、Der Spiegel(ドイツの有力週刊誌)が、Zoeの所有者がバッテリーのレンタル料を滞納すると、ルノーが遠隔操作でバッテリーを稼働させなくすることを暴いたのだ。

債権回収屋を送り込むよりは穏便な対応かもしれないが、これはドライバーの自治権が失われ、自動車メーカーや政府、あるいはハッカー達によって車の心臓部となるコンピューターを遠隔操作される時代がやってくることを意味するのかもしれない。(このような状況でクラウドが登場すると、ウェブサイトが攻撃を受けるように車も電子的な嫌がらせを受けるようになるかもしれない。)

操作される車

グーグルベンチャーズ(グーグルの投資部門)が、ライドシェアリングサービスを展開するUberに対して2億5000万ドル出資したことを、どう解釈すれば良いだろうか?まるで今グーグル検索した後、すぐに店に電話をかけるみたいに、Uberのアプリや簡単なグーグル検索でグーグルの自動運転車の全車両を探し出して、同じ目的地に向かう車をシェアすることができたら?(いや、これは決して悪くはないかもしれない。)

私はグーグルが自動運転車について、意図的に邪悪な構想を持っているとは決して思っていない。ただグーグル等が収集するビッグデータの分析によって、一番近道で安全なルートでなく、グーグルにとって最も都合の良いルートを通るよう、自動運転のアルゴリズムが設定されている可能性は想像に難くない。これがおそらく、我々が車を運転すること放棄し、皆で車を共有するような世界になった時の、一番有益なシナリオなのかもしれない。

「我々は可変的な技術を開発しているのです。」とメッドフォード言う。元々彼は、National Highway Traffic Safety Administration(米高速道路交通安全事業団)の副局長だった。彼は、グーグルの自動運転車は富裕層だけでなく、(あなたや私のような)一般の人々も所有できるようにしたいと考えている。「グーグルの野望は壮大ですよ。」

※Read Write Driveは、運送の未来について論じるシリーズです。

画像提供:Google

Bradley Berman
[原文]