リアル店舗の強みを活かすオムニチャネル戦略/渡部 弘毅
アマゾンを始めとするECサイトの攻勢により、リアル店舗は厳しい状況ですが、オムチャネル戦略により、リアル店舗を強みとした差別化されたサービス提供が実現可能となります。

小売業界が最も注目しているもののひとつに「オムニチャネル」という概念があります。オムニは「あらゆる」の意味。店舗やEC(電子商取引)サイト、電子メール、ソーシャルメディアといったチャネル(顧客接点)をシームレスに統合し、どのチャネルでも顧客に同じ購買体験を提供しようというもので各小売企業が取り入れ始めています。

イオンは2016年度までに、スーパー全1600店で売り場とインターネットを連動させるサービスを始めます。消費者が店頭でスマートフォン(スマホ)を使い撮影した商品を即日宅配するほか、専用サイトに誘導して店に用意しきれない商品も販売します。

一方、セブン&アイ・ホールディングスは約1万6千店のコンビニエンスストアの活用を要とし、百貨店からコンビニまでグループ全社の商品をネットで買えるなど総合的な品ぞろえが特徴で、購入商品は全てのコンビニで受け取ることができるようにします。

「マルチチャネル」が、ターゲット層に合わせて、店舗、通販、ネットというように複数チャネル(販売経路)を顧客に合わせて使い分ける手法に対して「オムニチャネル」は、顧客を中心に商品の認知から、検討、購買に至る一連の購買またマーケティングプロセスで横串を刺してすべてのチャネルを併用して顧客にアプローチしていく、という違いがあります。この違いを顕著に分かる事例が「ゾゾタウン」です。

衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは、スマートフォン(スマホ)を使った新サービスを始めました。

新サービスはスマホの専用アプリをダウンロードすれば利用できます。参加ブランドの店頭でバーコードを読み取ると、価格や色など詳細な商品情報が手に入り、ほかの商品との組み合わせ画像なども参考に買い物が楽しめ、店頭に並ぶ商品をその場で買わなくても、ゾゾタウンを経由してどこからでも注文できるというものです。

まさしく、「マルチチャネル」でなく「オムニチャネル」の事例ですね。

ただし、店は下見だけという「ショールーミング化」への警戒が渦巻き、ゾゾタウンの新サービスを巡って商業施設は対応が分かれたようです。

オムニチャネル化を脅威と位置づけ店舗内での囲い込みに走るか、機会と位置付け積極的に取り組んでいくかは企業の置かれている立場や戦略により違いますが、「最終的には客様がその評価をくだす」という基本を忘れないようにしなくてはいけません。