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アマゾンはオクトコプター・ドローンを使って荷物を届ける計画を打ち出した。ただその前にクリアしなければならないハードルはいくつかありそうだ。

今週のはじめに、アマゾンは流通の常識を覆すような発表を行った。あまりに突拍子もない話なので作り話かと思われそうだが、どうやらアマゾンは本気のようだ。

アマゾンが発表したのは「プライム・エアー」と名付けられた新しい輸送サービスだ。「オクトコプター・ドローン」という8つのプロペラを備えた無人航空機を使って、アマゾンの出荷する商品を消費者へ直接届けてくれるというものだ。輸送の対象となるのは5ポンド(約2.3kg)以内の商品で、注文をしてからなんと30分以内に家まで届くという。米国報道番組「60minutes」のなかで、アマゾンCEOのジェフ・ベゾスが最近行われた試験飛行の模様を紹介している。

こんなことが本当に可能なのだろうか?信じられないのも無理はない。このサービスはまだ当分先の話なのだ。ベゾス自身もプライム・エアーの実現は4〜5年先になると予想している。それなら何故このタイミングで発表したのか?おそらく、サイバー・マンデー(※)には誰もがアマゾンのサービスを話題にするからだろう。

※感謝祭の次の月曜日を指し、年末セールと重なるためオンラインの店舗で売り上げが急増する日。各社はこの日に合わせて各種キャンペーンを展開する。

ひとまずアマゾンは世間の関心を引くことに成功したようだが、本当にこの壮大な計画を実行に移せるのだろうか?プライム・エアー実現までに想定されるハードルについて考えてみよう。

FAA(連邦航空局)による規制

おそらくプライム・エアーにとって最大のハードルとなるのが、FAA(米連邦航空局)による規制だろう。今のところFAAは民間のドローンを米国空域に飛ばすことを許可していないからだ。ただし、連邦議会は同局に対してドローンの米国空域への取り入れ基準やその緩和に関するロードマップを年末までに提出するよう命令しており 、11月にドラフト案が提出されたばかりである。

アマゾンは、FAAが2015年までにはなんらかの結論を出すと睨んでおり、それまでには「我々も準備ができているはずだ」と述べている。

FAAがこの件を慎重に進めている理由は、決してドローン技術が殺人兵器として優秀すぎるせいではない。どうやら一番懸念されているのはプライバシーに関する問題のようだ。アメリカの空域を飛び回るドローンたちが、市民へのスパイ活動に利用されるのではないかと恐れているのである。アメリカ自由人権協会によれば、既に8つの州が民間ドローン(とその監視活動)に反対する法律を制定しているという。

もちろん、プライム・エアーに使われるドローンは市民を監視するためには作られたわけではない。ただ違う目的に悪用されるかもしれないという点が問題なのである。少なくとも今提出されているFAAのロードマップは、プライバシーの侵害を懸念している連邦議会議員たちを納得させるものではないようだ。残念だが、2015年まで気長に待つしかないのかもしれない。

安全性の確保

元Wired編集長でその後民間ドローン界の大御所となったクリス・アンデルソンは、ドローンによる荷物配送を「相当馬鹿げている」と切り捨てた。

「我々はドローンの農業利用は支持している。しかし、人が密集する都市部でドローンに荷物を配達させるのは決していい考えだと思えない。」

確かに、高速回転する8つのプロペラを持つロボットが人と接触したらどんな悲惨なことになるかは容易に想像がつく。米軍が使用しているドローンは上空からの観察や監視目的に使われているが、アマゾンのオクトコプターは低空飛行を前提としている。荷物をおろすためには地面から数センチの高さでホバリングしなければならないからだ。

一部のクアドコプター(4つのプロペラを持つ無人航空機)では、この安全性の問題は一応解決されている。例えばAR. Drone Parrotは柔らかいフレームでプロペラ部分を囲い、プロペラが直接人と接触しないようになっているのだ。ただサイバーマンデーのような忙しい時期になると、数十機のアマゾン・オクトコプターが同時にアパートの周辺を飛び回る可能性もあるわけで、事はそう単純ではなくなるだろう。

ドローンを使って故意に人を傷つけるような事態も起こり得るだろう。プライム・エアーには、人々の安全性を確保しながら荷物の配送を行うことが求められる。

盗難とハッキング

新しく登場した技術がいたずらや悪用によって台無しになることはよくある。

プライム・エアーが発表されるとすぐに、ツイッターはこの話題でもちきりになった。中でも目立ったのは商品の盗難に関するジョークだ。

「軽口:あのドローン撃ち落としたら、荷物はもらってもいいんだよな?」

郵便配達車をハイジャックする人はそうそういないだろうが、相手が人間ではなくロボットなら不法行為を働きやすいと感じる人はいるかもしれない。プライム・エアーが実現する事で、荷物の紛失率が上がってしまう可能性もあるだろう。

また、今時のドローンはハッキングにも耐える必要があることを忘れてはならない。昨年テキサス大学の研究チームが連邦議会に報告した内容によると、店頭で購入したGPS端末で、8万ドルに相当するドローンをハッキングできてしまったという。

「GPS信号さえ偽装できれば、ドローンを欺いて偽の信号に従わせることができる。事実上ドローンを操作することができるのです。」と軌道力学の研究者であるトッド・ハンプリー助教授は言う。

民間ドローン・サービスは他の国でも展開が予定されており、アマゾンよりも先に上記のハードルに直面することになりそうだ。例えば中国深圳市を拠点とする配送会社SF Expressは、既にオクトコプターによる配送実験を開始している。

SF Expressがプライム・エアーの先駆者となり、うまくいけばアマゾンのオクトコプターが飛び立つ前に諸々の問題を解決してくれるかもしれない。

Lauren Orsini
[原文]