奨学金、返還訴訟を回避するには?
奨学金返還訴訟の提起、過去8年間で100倍増
奨学金を利用する人は現在約132万人。ほぼ3人に1人の学生が利用し、進学に役立てています(日本学生支援機構=旧育英会)。ところが、長引く不況や雇用不安のため、奨学金の返還が滞り、利用者が奨学金返還請求訴訟を提起されるケースが激増しています。昨年度までの8年間で100倍増。訴訟になってしまうと、返還が困難との経済的事情を主張したところで、法論理的にはあまり意味がなく、敗訴する可能性が高いといえます。そして、判決が確定してしまえば、財産(給料も含みます)の差し押え等の強制執行の手続きをとられる事態となってしまうでしょう。
返済困難者への日本学生支援機構の3つの制度
このような事態を回避するため、返済が難しくなった時の対応として、奨学金利用者が最も多い日本学生支援機構には(1)減額返還制度(2)返還期限猶予制度(3)所得連動返還型無利子奨学金制度が用意されています。
(1)減額返還制度とは、災害、傷病その他の経済的理由により奨学金の返還が困難となった場合に、願い出により当初約束した一回あたりの割賦金を2分の1に減額する制度です。返還予定総額は変動しませんが、返還期間を延長できます。
(2)返還期限猶予制度とは、災害、傷病等により返還が困難となった場合や、学校等に在学するとき、願い出により奨学金の返還期限を猶予する制度です。一定期間の返還を先送りにすることができます(1年ごとの更新で最長5年)。
(3)所得連動返還型無利子奨学金制度とは、平成24年度から導入され、無利子奨学金の貸与を受けた本人が卒業後に一定の収入(年収300万円)を得るまでの間は、願い出により返還期限を猶予する制度です。
これらの制度の利用には適用条件や必要書類、願い出の提出期限などがありますので、詳しいことは同機構に確認してください。
奨学金はローン。「個人再生」や「破産」の選択肢も
その他の一般的な債務整理の方法としては、返還方法を変更する形での「任意整理」や、裁判所に申し立てて返還予定総額を圧縮する「個人再生」の他、「破産」などの手続きを検討することも考えられます。なお、個人再生や破産の場合、親族等が連帯保証人等になっているときには、当然、その人たちへも影響が及びますので、その点の配慮は必要です。
奨学金はローンです。奨学金利用者には、その認識をしっかりと持ち、返済が行き詰まってしまう前に、機構や専門家に相談することをオススメします。
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