メンタルヘルスの課題解決に向けて/小槻 博文
【ベンチャー・中小企業・NPO等の広報・PR活動事例】
新しい形のメンタルヘルス管理の実現に向けた業務支援サービスを展開する株式会社iCARE。
同社ではこの10月に産業医のための業務支援クラウド・サービス「Catchball(キャッチボール)」をしたが、今後同サービスを通じてどのようなコミュニケーション活動を図っていくのか、共同創業者である山田洋太氏・飯盛崇氏の両氏に話を聞いた。
<起業の経緯>
iCAREは一言でいうと、産業医のための電子カルテに関する事業を展開するとともに、産業医業務も提供するなど、企業のヘルスリスクマネジメントを推進するソーシャルベンチャーだ。
もともと山田氏は沖縄の久米島で離島医療に携わっていたが、そこで地域医療の崩壊を目の当たりにしたことにより、その状況を打破する方法を探るべくビジネススクールの門をたたくことにした。その一方で入学後はビジネススクールの授業以外に心療内科のトレーニングも並行して延べ1万名ほどの患者と向き合ったり、ビジネススクールの同級生らと話したりするなかで、企業のメンタルヘルスに多くの課題があることを知り、この課題を解決しなくてはならないと次第に考えるようになり、最終的にこの事業を興すことを決意した。
また飯盛氏は、労働人口が減少の一途をたどっていくなかで、生産性を高めるか、潜在労働力を見つけなくては、日本経済は衰退の一途をたどっていく状況に危機感を覚えたことからビジネススクールに入学したが、そこで山田氏に出会い、そしてメンタルヘルスの問題に注目するようになっていった。
「うつ病疾患者は日本に約300万人いると言われていますが、本来この方々が健常者として活躍していれば相応の労働力になっているはずであり、彼らもまた潜在労働力と言えます。したがって労働力が減少していくなかで、メンタルヘルスの課題を解決する事ことが労働力減少の一つの解決策になりうるのではないかと考えた次第です。」(飯盛氏)
<産業医・メンタルヘルスの現状>
そもそも産業医とは労働者が働く場で人体や健康を害することを防ぐために生まれた職種であり、現在では社員50名以上の企業は産業医と契約すること、1,000名以上の企業は産業医を専従とすることが法律で定められている。そして昔は製造業が中心だったためフィジカル管理が主とされてきたが、近年はサービス業の台頭などによりメンタルヘルスへとその主要テーマは変わってきている。
そのようななかで毎年3万人以上が自殺することが問題になっているが、そのうち約9,000人が労働人口で、その要因は過労死やうつ病によるものだそうだ。そして過労死についても、何かしら疾患している社員に対して企業側がそれを把握せずに配置転換してしまったり過重労働を課してしまったりするなど、実はメンタル面での要因が大きく影響しているケースが多いという。
したがってフィジカル・メンタル双方の健康リスクをきちんと見える化して、企業側に対して適切な対応を提案するのが産業医の役割と言えるが、実は健康診断やメンタルヘルスの結果は紙で管理されることが多いため、結果の把握やデータの活用が難しいのが現状だ。
そこでこれら健康診断やメンタルヘルスの結果等をデジタル化することにより、効率的に質の高いメンタルヘルスを実現しようと開発されたのが「Catchball(キャッチボール)」というサービスだ。
<コミュニケーション活動の方向性>
こうして2013年10月に「Catchball」がリリースされたわけだが、今後のコミュニケーション活動については、サービスだけではなく産業医の存在意義やメンタルヘルスの重要性を啓発していくことを意識しているという。
そこでまずは成長性の高い企業に「Catchball」を導入してもらい、事例として発信しながら「産業医」「メンタルヘルス」「Catchball」を包括的に訴求していこうと考えているそうだ。成長企業をターゲットとしているのは、その成長過程でメンタル・フィジカルともにヘルスリスクが高まるため、ヘルスリスクをマネジメントすることが出来れば、本業に集中することが出来、そしてより高い成長を遂げられる可能性が高まると考えるからだ。
また同社自身が“事例”となるべく、メンタル失調経験者の積極採用も進めている。うつ病を患っていようがいまいがその人自身の能力とは関係ないことを自ら証明し、そして発信していきたいと考えており、その取り組みは既にマスメディアでも取り上げられ始めている。
<今後の方向性>
このように「産業医」「メンタルヘルス」「Catchball」を訴求・啓発していきながら、フィジカルとメンタルのバランスがしっかりとれ、生き生きと働く社員を増やすことによって組織を活性化させていく、そんなプラットフォームに「Catchball」をしていきたいと言う。
そのためにも「Catchball」を業務改善ソフトにとどまらず、蓄積されていくデータを企業側にフィードバックしたり、さらにはデータを分析して課題に見合ったソリューションを提案・提供したりしていくことが重要な役割だと同社では考えている。
「組織活性の解は一つではなく多様であるべきですので、当社単独にこだわらず当社のデータベースをプラットフォームにして様々な企業と連携していきながら、一人ひとりが活き活きと働き、暮らすことが出来る世界の実現を追求していきたいと思います。」(山田氏)
メンタルヘルスの重要性が叫ばれて久しいが、まだまだ未成熟な分野と言えよう。そのようななかで、同社のような企業が現れてそして成長していくことによって、労働力の問題はもちろんのこと、現代社会においてさもすると希薄化・荒唐無稽してしまっている“人の尊厳”をも取り戻すことにつながるのではなかろうか。そのような期待も込めながら、今後も同社の挑戦を見守っていきたいと思った、そんなインタビューであった。
新しい形のメンタルヘルス管理の実現に向けた業務支援サービスを展開する株式会社iCARE。
同社ではこの10月に産業医のための業務支援クラウド・サービス「Catchball(キャッチボール)」をしたが、今後同サービスを通じてどのようなコミュニケーション活動を図っていくのか、共同創業者である山田洋太氏・飯盛崇氏の両氏に話を聞いた。
iCAREは一言でいうと、産業医のための電子カルテに関する事業を展開するとともに、産業医業務も提供するなど、企業のヘルスリスクマネジメントを推進するソーシャルベンチャーだ。
もともと山田氏は沖縄の久米島で離島医療に携わっていたが、そこで地域医療の崩壊を目の当たりにしたことにより、その状況を打破する方法を探るべくビジネススクールの門をたたくことにした。その一方で入学後はビジネススクールの授業以外に心療内科のトレーニングも並行して延べ1万名ほどの患者と向き合ったり、ビジネススクールの同級生らと話したりするなかで、企業のメンタルヘルスに多くの課題があることを知り、この課題を解決しなくてはならないと次第に考えるようになり、最終的にこの事業を興すことを決意した。
また飯盛氏は、労働人口が減少の一途をたどっていくなかで、生産性を高めるか、潜在労働力を見つけなくては、日本経済は衰退の一途をたどっていく状況に危機感を覚えたことからビジネススクールに入学したが、そこで山田氏に出会い、そしてメンタルヘルスの問題に注目するようになっていった。
「うつ病疾患者は日本に約300万人いると言われていますが、本来この方々が健常者として活躍していれば相応の労働力になっているはずであり、彼らもまた潜在労働力と言えます。したがって労働力が減少していくなかで、メンタルヘルスの課題を解決する事ことが労働力減少の一つの解決策になりうるのではないかと考えた次第です。」(飯盛氏)
<産業医・メンタルヘルスの現状>
そもそも産業医とは労働者が働く場で人体や健康を害することを防ぐために生まれた職種であり、現在では社員50名以上の企業は産業医と契約すること、1,000名以上の企業は産業医を専従とすることが法律で定められている。そして昔は製造業が中心だったためフィジカル管理が主とされてきたが、近年はサービス業の台頭などによりメンタルヘルスへとその主要テーマは変わってきている。
そのようななかで毎年3万人以上が自殺することが問題になっているが、そのうち約9,000人が労働人口で、その要因は過労死やうつ病によるものだそうだ。そして過労死についても、何かしら疾患している社員に対して企業側がそれを把握せずに配置転換してしまったり過重労働を課してしまったりするなど、実はメンタル面での要因が大きく影響しているケースが多いという。
したがってフィジカル・メンタル双方の健康リスクをきちんと見える化して、企業側に対して適切な対応を提案するのが産業医の役割と言えるが、実は健康診断やメンタルヘルスの結果は紙で管理されることが多いため、結果の把握やデータの活用が難しいのが現状だ。
そこでこれら健康診断やメンタルヘルスの結果等をデジタル化することにより、効率的に質の高いメンタルヘルスを実現しようと開発されたのが「Catchball(キャッチボール)」というサービスだ。
<コミュニケーション活動の方向性>
こうして2013年10月に「Catchball」がリリースされたわけだが、今後のコミュニケーション活動については、サービスだけではなく産業医の存在意義やメンタルヘルスの重要性を啓発していくことを意識しているという。
そこでまずは成長性の高い企業に「Catchball」を導入してもらい、事例として発信しながら「産業医」「メンタルヘルス」「Catchball」を包括的に訴求していこうと考えているそうだ。成長企業をターゲットとしているのは、その成長過程でメンタル・フィジカルともにヘルスリスクが高まるため、ヘルスリスクをマネジメントすることが出来れば、本業に集中することが出来、そしてより高い成長を遂げられる可能性が高まると考えるからだ。
また同社自身が“事例”となるべく、メンタル失調経験者の積極採用も進めている。うつ病を患っていようがいまいがその人自身の能力とは関係ないことを自ら証明し、そして発信していきたいと考えており、その取り組みは既にマスメディアでも取り上げられ始めている。
<今後の方向性>
このように「産業医」「メンタルヘルス」「Catchball」を訴求・啓発していきながら、フィジカルとメンタルのバランスがしっかりとれ、生き生きと働く社員を増やすことによって組織を活性化させていく、そんなプラットフォームに「Catchball」をしていきたいと言う。
そのためにも「Catchball」を業務改善ソフトにとどまらず、蓄積されていくデータを企業側にフィードバックしたり、さらにはデータを分析して課題に見合ったソリューションを提案・提供したりしていくことが重要な役割だと同社では考えている。
「組織活性の解は一つではなく多様であるべきですので、当社単独にこだわらず当社のデータベースをプラットフォームにして様々な企業と連携していきながら、一人ひとりが活き活きと働き、暮らすことが出来る世界の実現を追求していきたいと思います。」(山田氏)
メンタルヘルスの重要性が叫ばれて久しいが、まだまだ未成熟な分野と言えよう。そのようななかで、同社のような企業が現れてそして成長していくことによって、労働力の問題はもちろんのこと、現代社会においてさもすると希薄化・荒唐無稽してしまっている“人の尊厳”をも取り戻すことにつながるのではなかろうか。そのような期待も込めながら、今後も同社の挑戦を見守っていきたいと思った、そんなインタビューであった。